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湯浅 誠さんからのメッセージ 『見過ごされた人たち』

2012年11月19日(月)

11/19放送の
シリーズ 貧困拡大社会 見過ごされた人たち
にご出演いただいた湯浅 誠さんに収録の感想を伺いました。

 20121119_yuasa.jpg
湯浅 誠さん
(反貧困ネットワーク事務局長)

 

Q.今回は作家の西村賢太さんをゲストに招いての放送でしたが、
感想はいかがでしたか?


率直な意見を言っていただいて良かったですね。
世の中には生活保護の問題を西村さんがおっしゃったように
感じている人が非常に多いと思いますので。

元々その問題の知識がある人と議論をすると、
その世界だけで固まってしまい
別の意見が入らないこともあります。
なので、今回の西村さんのように、
福祉業界とは別の視点から素朴に感じた
「これはいったいどうなっているんだ」
という疑問を言っていただくと、
改めて問題を考えることが出来るので、
幅が広がると思いました。


Q.西村さんは「自分も過去に日雇い労働で辛い経験をしたが、
生活保護は受けないと決めていた」と話していましたが、
それを聞いてどう感じましたか?


それまで大変な苦労をし、困窮も経験された人が、
「生活保護を貰うということ」にシビアになるのは
極めて一般的だと思います。

多くの場合、生活が出来ている間は、
生活が難しい人に対して
「本人の努力が足りないからだ」と考えます。
そして、そう思っていた本人が生活が困難になると、
当然「自分の努力が足りないんだ」
と自身に説明してしまう訳です。
そうすると
「人のお世話にならずに、もっと自分が頑張ればいいんだ」
という考えに陥ってしまう。
でもその結果、生活がどん底まで行ってしまう、
ということもあるんですね。


Q.西村さんの場合は、
そういった状況の中で「本」に支えられたと話していましたが、
「心のよりどころ」を持つことが大切なのでしょうか?


何かが自分に見つかることで、
それに支えられる人はたくさんいます。
その「何か」は、たとえば農業だったり、
友人、ネット、テレビ……、
何でもいいんですけど、
そういうものが見つかると、
人は強くなれるんですね。

言い換えれば、
社会がやらなければならないのは、
そうしたいろんなきっかけを
いかに提供することができるかだと思います。

また番組の中でも出てきていましたが、
その場があることで、
「最初は農業に惹かれてそこに行ったけれども、
そこで得たのは友達だった」
「学生ボランティアさんの相手をしている中で
自信がついた」
といったような、
当初の目的以外のところでも
また別のきっかけを掴む、
ということも普通にあるんです。

なので、そういったきっかけをつくれる場が大事だと思いました。


Q.今回の放送のどのようなところを視聴者に見て欲しいですか?

生活保護を受けている人は増え続けている。
その中で、「簡単に受けられるようになってきている」
と言う人もいますが、
実際には生活保護の基準額=最低生活費を
下回っているにもかかわらず、
給付を受けていない人がその何倍かいるんです。
その人たちが耐え忍びながら生きている事実。
結局ここをどうするのかが問題なんですね。
このまま放置しているともっと酷いことになりますし、
必然的に生活保護の額が増えざるをえない。

その事実を受け入れることが必要かと思います。
そうすると次に「じゃあこれをどうすればいいのか」
「生活保護以外に手段はないか」と、
その解決策を探し出す旅が始まるんです。
まずはこの事実をしっかりと受け入れてもらえたらと思いますね。

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