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"あいだ"を埋める支援の大切さ ~「ゆずりは」同行取材記 その2~

2014年06月24日(火)

こんにちは、番組担当デスクです。
7月1日からの番組の放送が近づいてきました。

先日は、スタジオに女優・タレントのサヘル・ローズさんと山梨県立大学教授の西澤哲さんをお呼びして、VTRを見ながらトークを収録しました。
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さて、今回は前回に引き続き、施設出身の人たちの相談にのる「アフターケア相談所ゆずりは」の支援現場の取材記です。

前回の記事では、「ゆずりは」の高橋さんがサポートしている、シングルマザーのYさんについて書きました。今日は、高橋さんがYさんに具体的にどんな支援をしたのか、お伝えしたいと思います。



Yさんが困っていたのは、住まいの問題でした。Yさんと小学生の娘さんは2人で、西日本のある町の、公営住宅に暮らしていました。

しかし、その住宅は町の中心部から遠く離れ、ぜんそくの症状がある娘さんには、小学校まで歩いて通うのが難しい状況でした。


窓には網戸がなく、虫が入ってくるため真夏でも窓を開けられません。しかしクーラーも設置されておらず、蒸し風呂のような中で眠るしかなかったといいます。長年のストレスから体調がすぐれず、仕事が十分にできないYさんは、経済的に厳しく、自力で引っ越す余裕はありません。

耐えかねて行政に相談したところ、母子寮に移るしかないと言われたそうです。DVから逃げている女性などが暮らす母子寮は、規則が多く、
小学校に通う娘と2人で暮らすには不自由です。

厳しい環境での生活が続く中、行政の担当者にも怒りをぶつけてしまい、関係もこじれてしまっていました。Yさんや娘さんの状況を聞くにつけ、引っ越したいというのは決してぜいたくな要望のようには思えませんでした。

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どんな環境に生まれても、安心して育つことができる社会とは?

こうした状況を丁寧に聞き取った「ゆずりは」の高橋さんは、Yさんと行政との“あいだ”に入り、家賃の安い民間のアパートを手配することにしました。小学校の近くにいいアパートを見つけ、不動産屋さんの協力も取り付けた高橋さん。しかし、問題は賃貸契約の「保証人」でした。

施設で暮らしてきたYさんには、保証人を引き受けてくれるような親族はいません。高橋さんによれば、施設出身の人は社会に出た後、こうした保証人の問題で行き詰まり、ホームレスになってしまうことが少なくないといいます。

高橋さんは、有料で保証人を請け負う保証人協会や支援団体の助けなどを借りて、なんとか保証人の問題をクリア、Yさん親子は、無事に引っ越すことができました。


もし今回「ゆずりは」の支援が入っていなかったら…Yさん親子は、今年の夏を乗り越えられていたでしょうか?

「制度や仕組みはあっても、それがあるだけでは支援にならない」と高橋さんは言います。

追い詰められた生活環境で、相談者本人が、行政の窓口担当者と細かい手続きを進めていくのは困難なことです。様々な問題を複雑に抱えた人にとっては、正しい相談窓口や制度にたどり着くのさえ難しいといいます。

「この問題にはこんな支援策があります」「この課題にはこういう制度が使えます」というだけでなく、困難を抱える人と制度や仕組みとの“あいだ”を埋めてつなぐ存在の大切さを実感した取材でした。