本文へジャンプ

【大会5日目】NHKソチパラリンピックナビゲーター・為末大さんに聞く。

2014年03月13日(木)

大会5日目の放送を終え、ナビゲーターの為末大さんにお話を伺いました。

20140312_tamesue001.jpgのサムネイル画像大会5日目は濃い霧が会場を覆い、多くの選手が苦労しました。
あんな悪天候だと、一度スピートを落としてしまうと再加速することは難しいだろうなって、見ていて思いましたね。オリンピックのスキーも難しいと思いますが、パラリンピックのチェアスキーは一度スピードが殺されてしまうと自然落下に任せるしかないという点でよりシビアな感じがしました。


独特で、高度な競技なのですね。
ミスができない怖さと戦っているようなところもありますよね。

 


バイアスロンのミドルで久保恒造選手はメダルには届きませんでしたが、多くの人に結果を期待される中で、早く滑るための“リスク”と戦っている部分もあったのでしょうか。
そうですね。あれだけ各国からサポートチームが来て、選手たちも準備してきているわけですから、「絶対にこの人がメダルを取る」ということはなくなってきていますよね。もうオリンピックと同じですよ。その中で勝つのであれば、どんどんリスクを取って自分を変えていったり、新しいものにチャレンジしていかなくてはなりません。でも、それが裏目に出ると、「あんなことするから」と言われるし、逆にいい方に転ぶと「やっぱりチャレンジは大事」と言われる。厳しい世界だけどスポーツはそういうものだと思うんですよ。でも僕は、リスクを取った久保選手はアスリートっぽくて好きですね。
 

その中で、「悔い」というのは残るのでしょうか。
選手それぞれだと思います。僕の場合、一番大きな“リスク”は、北京オリンピックの2年前に一度「ハードルを辞める」ということでした。このままのスピートじゃ大会に間に合わないと思って、早く走る練習を徹底的にしてからもう一度ハードルを飛ぶことにしたんです。もしかするとハードルにうまく合わせられなくなる可能性もあるけど、それよりも足が速くなる可能性を取ろうと思ったんですね。結局、北京ギリギリまでハードルに走りが合いませんでした。たまに「もしハードルを封印しなければ北京でメダルを取れたんじゃないかな」って思い出したりしますが、あの時の気持ちとしては「金メダルを取るならこのままじゃダメだ」と考えていたことも確かですし、複雑な心境ですね。
 

パラリンピックもそういう高いレベルにあると・・・。
そうですね。何が「安全策」で、何が「リスク」なのかは、世間から見るとわかりにくいかもしれませんが、パラリンピックはそういう高いレベルにきているんです。単純に「こうすれば必ず早くなる」というわけじゃなくて、「Aに行った方がいいのか、Bに行った方がいいのかわからないけど、俺はAに賭けるんだ」という世界で戦っている。それをもっとわかってもらえたらなと思うんですけどね。

20140312_tamesue003_R.JPG
左から、山田キャスター、ソチパラリンピックナビゲーター為末大さん、
アルペン元オリンピック日本代表・川端絵美さん、
クロスカントリー元オリンピック日本代表・夏見円さん


メダルの色だけではなく、決勝に残らなかった選手たちや、その裏まで知れば、もっと面白くなりますね。
「メダルを取るまでのストーリー」という面白さももちろんありますが、「挑んだプロセス」の面白さもありますよね。ひとりの選手がどんなリスクを取って挑んできたのか。今回のアルペンスキーの方も、攻めた選手、攻めなかった選手、失格になる確率があるけど攻めた人もいるでしょうし、攻めてアドバンテージを取れたら次が有利になると考えたりとか、いろいろな戦略があったと思うんです。選手たちがどんな気持ちで競技に挑んでいるのかというのはすごく面白いところですね。


そういう意味では、今回のスーパー複合で鈴木猛史選手は最後まで滑りきることができませんでしたが、得意な回転なので攻めてリードをしておこうという戦略があったのかもしれませんね。
攻めたんだと思いますね。結果だけを見ると簡単に表せてしまいますが、本人にとってみるともっと周辺にいろんな戦略があって、それらが合わさって結果が出ているわけなので、同じ予選敗退でもいろんな「物語」があるわけです。そこがスポーツのおもしろい所で、人生に例えられる所でもあるんじゃないかなと思うので、いろいろな“チャレンジ”がもっと深くまで伝わるといいですね。そういう彼らの「パラリンピアン」としての姿に価値があるんじゃないかと思います。

 

◆シリーズ ソチパラリンピック
3/20(木)夜8時、熱戦の舞台裏を生放送!

番組ではメダリストたちをお招きします。

 

過去放送
(1)目指せ!“ぶっちぎりの速さ” ―アルペンスキー 狩野亮―
(2)攻めてつかめ!まだ見ぬ“金” ―アルペンスキー 鈴木猛史―
(3)究極の走りへ!最強ロシアに挑む ―ノルディックスキー 久保恒造―
(4)ただひたむきに 前へ ―ノルディックスキー 出来島桃子―

コメント

※コメントはありません