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"がん"になっても働ける社会を

2014年08月06日(水)

日本人の2人に1人が、がんになるという時代。先日、国立がん研究センターが、今年全国で新たに診断されるであろう、がんの数の予測を発表しました(1人で複数の場合もあり)。それによると、今年のがん罹患数は約88万。診断技術の進歩や高齢化などの影響で、4年前と比べ、罹患数はおよそ8万増えるとの予測です。
一方で、医療技術は日進月歩で進んでいます。がんの治癒の目安とされる「5年後の生存率」は、がん全体で、1970年代の30%から60%近くにまで上昇。がんの種類によっては90%を超えています。しかし、「がん=絶望(死)」のような、かつてのネガティブなイメージがまだ根強く残っているのが現実です。


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就労に関する情報が手に入るようになってきた(国立がん研究センター中央病院)


ハートネットTVでは、去年9月、「がんサバイバーの時代」というシリーズで、「がんと就労」をテーマにお伝えしました。

シリーズ がんサバイバーの時代
第2回「がんを抱えて“働く”」(2013年9月3日放送)
 

医療技術が進んでいる中で、がんになっても、「働きたい」「働ける」という人が増えています。一方で、実際は「がんになったら働けない」という先入観を、「雇用する側」が、時には「働く側」も持っていることが、就労の壁になっています。
厚生労働省によると、20歳から64歳までの働く世代でがんと診断される患者さんは年間22万人に上りますが、仕事を持つ3人に1人は、診断後、自主退職するか、解雇されているという調査結果があります。

厚労省は、一昨年まとめた「がん対策推進基本計画」の中で、がん患者さんの就労支援を盛り込みました。昨年度からは国のモデル事業として、ハローワークでがん患者さんへの就労支援がスタートし、今年度は全国12の地点で行っています。
さらに、今年、大きな動きが。がん患者さんが働きやすい職場環境づくりや相談体制のあり方について考える検討会が、今年2月に立ち上がったのです(厚生労働省「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」)。


先日、この会の委員の一人、国立がん研究センターがんサバイバーシップ支援研究部長の高橋都さんにお話を伺いました。


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去年9月の番組に出演していただいた高橋都さん。「『がんと就労』の問題に関わって、社会的ニーズがこれほど高くなるとは思いませんでした。驚いています」と話している


委員は医師、研究者、企業など様々な立場で構成されました。
それぞれの立場から多面的な提言があった中で、高橋さんは、
「がん体験者の方やご家族が委員に入ったことに大きな意味がありました」と強調します。
「患者さんが置かれている実情や思い、さらにどんな支援を求めているかを伝えられる大事な機会でした。5回に渡る検討をまとめた報告書がこの夏出ます。これがとても大きな意味を持ちます。なぜなら、報告書の提言をもとにして、新たな事業や制度が立ち上がる可能性があるからです。それが、世の中を大きく変える動きにつながるかもしれません。」。

逆に言うと、報告書に書かれていない事業の実施は難しいことが多い、と考えられます。報告書の内容が、今後の「がんと就労」の問題を少しでも軽減できる礎となれば、と思います。


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検討会資料。がん医療が進歩していることが、データで明らかに。


最後に高橋さんは、「就労の問題はがん独自のものもありますが、がんを特別視するのではなく、他の病気の患者さんにとっても同様の問題を解決する一助となることを願っています」とも話しました。

病気になっても「働きたい」。この気持ちは、当然と言ってもいい。働くことは、人間の尊厳にも通ずるからです。
この問題の関心が広がることは、社会にとって大きなプラスとなることは間違いありません。

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