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りんごが繋いだ命 ~化学物質過敏症~

2013年12月25日(水)

この季節、毎年楽しみにしているものがある。
りんごだ。
青森の祖父が「ここのりんごは絶品!」という
りんご園から、毎年届く。


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驚くほど蜜がたっぷり。2つに割ったときに見える蜜の量に、つい頬が緩む。


その祖父がこの世を去り、差出人が祖母になった2回目の冬である。

「おいしいね」
朝、1個のりんごを4人で分け、家族の1日が始まる。
祖父母への感謝の思いをかみしめながら。

1個のりんごとの出会い。
そのおかげで、命を繋ぐことができたという映画を先日見た。
ドキュメンタリー映画「いのちの林檎」。
鑑賞中、何度目を閉じ、ため息をついただろう。

「化学物質過敏症」。どれくらいの人が知っているだろうか。


発症のきっかけは、例えば、
新築の家に入居する際、
壁の塗料などに使われた特定の化学物質に大量にさらされる、
または、微量でも長い期間にわたってさらされた場合などだ。

微量の芳香剤、農薬、排気ガス、たばこの煙などに反応し、
呼吸困難に陥ることもある。
映画に登場した早苗さんは重症の方で、
頻繁に発作を起こし、倒れてしまう。
「においを認識するより、体がまず反応して
 心臓が締めつけられる」と話す
その過酷さは、想像を絶する。


化学物質にあふれた世の中。
そこから逃れるため、早苗さんは標高千メートルに家を構え、
母と2人で生活している。
服は、すべてオーガニックコットン。
主な食べ物は、臼で小麦をひいて自ら作るうどんやパンだ。


その早苗さん。
かつて水が飲めなくなり、命の危機が瀕した時があった。
そのときに、体内に水分を供給し彼女を救ったのは、
現代医学ではなく「りんご」だったのだ。
そのりんごとは、肥料や農薬を一切使わずに作っている、
ある青森のりんご農家のもの。
細くスライスし、満面の笑みでりんごを味わう早苗さんの表情は、
今でも忘れられない。


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映画のパンフレット「私が息を吸える場所はどこ?」


化学物質過敏症の人は、
京都大学名誉教授の内山巌雄さんらが成人を対象に行った調査から、
全国で約70万人、
子どもも含めれば約100万人だという。
(NPO法人 化学物質過敏症支援センターHPより)
突然発症することから、私たちも他人事ではない。


早苗さんも家族も、周りの無理解に苦しんできた。
今回、化学物質過敏症のことを知ってほしいという思いで
映画出演を受けたという。


私たちは、日々の生活の中で、
化学物質の恩恵に受けていることも多い。
一方で、苦しんでいる人がいることを忘れてはならない。
現実をしっかり見つめたい。
必要以上に化学物質を使わない、
近くに発症した人がいたら手を差し伸べる・・・。
私たちにやれることはある。


今、早苗さんはどうしているか。
映画館を後にしながら、彼女の顔が頭に浮かんだ。

コメント

毎回、勉強になります。私も、娘のアトピー性皮膚炎に悩まされています。40歳になってもまだ、続いています。孫に症状が出ないかと心配しています。医学が進歩して少しは気持ちが楽になりましたが、娘との葛藤を思うと不安な日々です。この現代病のアトピー性皮膚炎が無くなり、快適な生活を送れる日々が来ることを願っております。今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

投稿:西口清満 2013年12月29日(日曜日) 11時19分