クローズアップ現代

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2020年5月20日(水)
外出自粛の陰で…ゲーム依存は大丈夫?

外出自粛の陰で…ゲーム依存は大丈夫?

いま世界中で急増している”オンラインゲーム”への依存。国内でもインターネット依存の疑いがある中学・高校生は93万人にのぼるとされ、この5年でおよそ2倍に増加。さらに、新型コロナウイルスの影響で外出自粛が長期化するなか、自宅に閉じこもる子どもが外とつながるオンラインゲームにのめりこんでいる。一方、4月には香川県で、平日60分、休日90分をゲームの時間の上限とする独自の条例が施行されたが、家庭への介入の是非や実効性をめぐり、賛否は分かれている。ゲームは生きづらさを抱える子どもの”居場所”となっているとの指摘も。「コロナ後の社会」に私たちはゲームとどう向き合っていくべきか。

樋口さん、高橋さんの対談の内容をまるごと読める記事はこちら https://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/185/index.html

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 樋口進さん (国立病院機構久里浜医療センター 院長)
  • 高橋利幸さん (ゲームプレゼンター)
  • 武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

外出自粛の陰で ゲーム依存は大丈夫?

深夜0時の住宅街。
キーボードを連打する音。

滝沢拳一さん(28)
「一番ひどかったときは、5日間(連続して)やっていたんですけど、その時は いすに体を縛りつけてやってて、幻聴、幻覚、砂嵐みたいな雑音が聞こえたり。」

ネット上の仲間とチームを組み、敵と対戦するオンラインゲーム。
ゲームにのめり込むあまり、家族に暴言を吐き、壁に穴を開けたこともありました。医者からは「ゲーム依存症」と言われています。

滝沢拳一さん(28)
「ゲームをやっているときだけが、生きてるって、居場所はここしかない。」


スマホで手軽にゲームができるようになる中、ネット依存の疑いがある中学・高校生は増え続け、93万人に上ります。
そこに新型コロナウイルスの流行が重なることで、若者の7割がネットに接する時間が増加。その大きな理由の一つがゲームでした。

大阪市立大学病院 精神科医 片上素久さん
「ゲーム依存の受診相談が殺到している。子どもがゲームにのめり込み、親がイライラし、親子関係が悪化するケースが増えている。」

自宅で過ごす時間が長くなる中、私たちはゲームとどう向き合うべきなのか、改めて考えます。


ゲーム依存症からの脱却を目指す人が暮らす民間の施設です。

ゲームの時間がコントロールできなくなり、依存症に陥った28歳の男性。
困り果てた家族とも話し合い、ここに入所を決めました。
男性がゲームにのめり込むきっかけとなったのが、オンラインのシューティングゲーム。
28歳 男性
「数字として出てくるんで、ゲームのスコア、成績が何点みたいな。」

敵を倒すと得点が入り、ランキングも発表されます。やればやるだけ成果が上がる。多い日は1日17時間 ゲームに没頭しました。

栗原:ゲームにはまるきっかけは?

28歳 男性
「(父親から)『勉強していい大学入れよ』『そういうふうにしないとお前はダメだ』とか、家に居場所が無かったのはあるのかな。(ゲームは)頑張れば頑張っただけ目に見える評価というか、何かできるんじゃないか、俺できるじゃんって。自尊心が上がる。」

次第にのめり込んでいった オンラインゲームの世界。スマホで手軽にできるようになると、それがさらに加速したといいます。

栗原:(スマホは)僕の画面だったら大丈夫ですか?

28歳 男性
「音が出なかったりとか、画面を見せられたりしなければ」

男性の了承を得て、当時していたゲームについて尋ねているとき…。

28歳 男性
「やっぱりちょっと気になります。そわそわします。」

28歳 男性
「誰にも言わないからとか、秘密にしとくから、一瞬だけとか。そういうのがあったら、やっちゃうかな。すごい揺れます、揺れ動きます。」

有料のゲームに男性は借金を重ねてのめり込み、その額はいつしか200万円にまで膨らんでいました。

28歳 男性
「(課金は)止まらなかったときは止まらなかったですね。脳汁 出たみたいな。本当に無意識にスマホを探している。スマホのゲームに支配されていた感じ。」


観客の前でゲームの勝ち負けを競う“eスポーツ”。

ここ数年、世界規模の盛り上がりを見せています。
去年 初めて国体にも取り入れられ、プロを目指す若者も増加。

しかし、こうしたeスポーツの隆盛が、ゲーム依存の治療にも影を落としているといいます。

久里浜医療センター 精神科医 松﨑尊信さん
「こちらが初診の方のリスト。例えばこういう黄色が、eスポーツ(のプロ選手)を目指す、お子さんが結構いらっしゃる。」

eスポーツが社会でもてはやされることで、子どもの治療がより複雑になっているというのです。

久里浜医療センター 精神科医 松﨑尊信さん
「(プロになるために)練習を積んだり、ゲームを長時間やらないといけないので、治療の動機づけが得られにくい。(プロになるという)大きな目標を子どもが持った時に大人は反対しにくい。」

この病院の患者で、eスポーツのプロを目指すという中学2年生の少年です。
ほとんど学校に行かず、毎日12時間ゲームを続けています。
1年ほど前に足に激しい痛みが走り、病院に入院。エコノミークラス症候群の兆候があると診断されました。

取材班
「今日は何時に起きたんですか?」

少年の祖母
「(午後)3時半くらい。起きてすぐやっていましたね。」

ゲームを巡って母親との関係も悪くなり、今は祖母が面倒を見ています。

夕方、この日 初めての食事を作り始めました。
しかし、少年は目もくれません。

小学5年生までは、外で友達と遊ぶ元気な子どもでした。
しかし、6年生になるとゲームにのめり込み、ひきこもるようになっていきました。

少年の祖母
「『プロゲーマーになるから 学校に行かなくたっていいんだ』と言っていました。人とコミュニケーションを取るのが上手じゃないんで、言いたいことも言えないっていうか。」

少年
「ああもう全然武器チェンジできない。」

少年の祖母
「ゲームの中では言ってますね。好きなこと言ってます。」

さまざまな問題が生じても、少年はプロになるという目標があるからゲームをやめないと言います。

取材班
「夢は?」

少年
「なれたらプロゲーマー。誰かの憧れになりたいのが一番でかい。」

取材班
「自分では(ゲームに)依存しているなと思う?」

少年
「前は(eスポーツのプロという)目標も何もなく とりあえずやってた。今は目標を立ててちゃんとやっている。」

取材班
「今日は何時までやるの?」

少年
「多分(深夜)2時くらいまで。」

少年の祖母
「何かきっかけがあって元に戻って、学校に行ってくれれば一番いいんですけど、なかなか難しいようだから、止められないですよね。もう見守るしかないかな。」


ビジネスモデルの変化がゲーム依存に関係すると証言する人がいます。
元大手ゲーム会社の芳山隆一さんです。

元ゲーム製作会社 芳山隆一さん
「一番最初に関わったオンラインゲームは、このタイトルなんですが。」

芳山さんは、「中の人」と呼ばれるオンラインゲームの運営などを担当してきました。

元ゲーム製作会社 芳山隆一さん
「(他のゲームとの競合で)お客様ってどんどん離れていく。離れていくのを、いかに維持するかの戦いをしていて。」

いかに飽きさせないようにするか。
芳山さんはリアルタイムでユーザーの動向を見て、仕掛けをしていきました。

元ゲーム製作会社 芳山隆一さん
「木金の数字を見る限り、(土日に)遊んでもらえる気配がないときに、木曜日に相談して、金曜日に追加のイベント(を用意する)。売り上げを維持しようとすれば、お客様がお金を使いたくなる施策が増えてくる。今まで笑顔で楽しんでくれていたお客さんが引き続き楽しんでくれるのか。」

芳山さんは、ゲーム業界のあり方に疑問を感じて会社を辞め、識者とともにゲームのあるべき姿を考える団体を立ち上げました。

ゲームクリエイターや医療関係者を集め、依存症を引き起こさず、ゲームが健全な文化として根づく方法について議論を重ねています。

ゲームクリエイター
「(若者が)ゲームで満足感を得ることで、不幸な道を選ぶことを思いとどまる、一時的に救われる側面はあると信じている。」

ゲーム依存症治療の従事者
「何時間以上やったらゲーム障害、そういうことではない。」

元ゲーム製作会社 芳山隆一さん
「(ゲーム会社と医療者が)対立してもしかたない。何かできることはあるのか。まず、それを考えるところ。(お互いを)知ることを始めて頂くだけで、議論が前進するんじゃないか。」


武田:自宅で過ごす時間が長くなる中で、ゲームの売り上げは増加しています。今や、なくてはならないという人も多いのではないでしょうか。栗原さん、「ゲームに熱中しすぎる」ことと「ゲームに依存する」ことの境目というのは、一体何なんでしょうか。

栗原:去年、実はWHOが「ゲーム障害」を治療が必要な疾患と定めているんですね。「ゲームの使用をコントロールできない」、「生活の関心事や日常生活より、ゲームを優先する」、「問題が起きてもゲームを続ける」など、こうした状況が12か月間以上続くことを「ゲーム障害」と定義しているんです。

武田:だからといってゲームをなくそうとか、すぐにやめようというふうには なかなかならないと思いますよね。そこで、どうゲームとうまくつきあっていくのか。きょうは専門家の皆さんと考えていきたいと思います。長年、子どものゲーム依存の治療に当たっている樋口さん、ゲームによって日常生活が送れなくなる、そして、それが長く続くことが問題なんですね。

ゲスト 樋口進さん(国立病院機構久里浜医療センター 院長)

樋口さん:最初の3つが依存行動ですね。一番最後、「ゲームによって、日常生活のさまざまな分野で明確な問題が生じる」、ゲーム過剰使用と。依存とどこが違うんだというと、一番最後の4番目の項目が明確にあるかどうかということがキーポイントになると思います。

武田:そしてもう一方、30年以上ゲームの開発に携わってこられたレジェンド、高橋名人。

ゲスト 高橋利幸さん(ゲームプレゼンター)

高橋さん:ゲームは悪いところもあるんですけど、いいところもたくさんあるんですね。オンラインで日本中の子どもたちと話せるということは、いじめの問題の悩みを相談できるんですよね。このゲームによって、救われている子どももやっぱりいると思うんですよ。WHOが「#Play Apart Together」という、家(うち)にとどまってゲームをしようと。そうすると感染は防げるんだということも言っているわけですよ。

武田:子どもがゲームばっかりして困るというのは、昔からあった問題だと思うんですよね。ゲーム会社としては、どういうふうに対処しようとしてきたのでしょうか。

高橋さん:まず、「年齢別制限による自主規制」というのを始めています。例えば、暴力ですね。(ゲームのなかの表現で)体が欠損しちゃう場合には、18歳とか20歳以上でないと遊んじゃいけないよとか。あとは「ペアレンタルコントロールの実施」ですね。例えば、毎月1000円以上は課金できないようにするとか、1週間で10時間以上画面に電源を入れられないようにするという感じのコントロールを親御さんが決めるということですね。業界的には、そういう変な方向にはみんなで行かないようにしようねということにはなっていますね。

武田:ゲームの時間を規制しようという自治体も出てきているんですよね。

栗原:香川県では独自にゲーム依存に関する条例を制定して、この4月から施行されているんですね。18歳未満のゲーム時間は平日60分、休日は90分まで時間制限を勧めています。そうしたことを子どもたちが守るように、保護者が管理するよう求めているんです。実は、この条例ができたということで、非常に賛否双方の声が高まったんですね。

武田:こんな意見もあります。

WEBメディア編集長 合田文さん
「コロナの状況であってもなくても なんですけれども、やっぱり子どもたちも1日何時間だけだよって言われて、その時間だけ制限しても、なかなか聞かないんじゃないかなというのが私の意見ですね。“どれぐらいの時間でどんな影響が出てくるか”がセットで分からないと、「こういう影響が出るからだめなんだな」とか「この時間ぐらいだったら楽しく遊べるんだな」というところが、本人たちに落とし込まれていない状況だと、うまくワークしていかないんじゃないかなというふうに思っています。」

武田:こういった規制は どのぐらい有効なんだろうと疑問を持つ方もいると思いますけれども、どのようにお考えになりますか。

樋口さん:時間については、やっぱりある程度の目安が必要なんじゃないかというふうな感じはいたします。「平日のゲーム時間と生じる問題」の中の、ここでは学業成績とか仕事の能率が落ちたということについて回答していますけど、1時間未満が5%で、1時間以上になってくると10%を超えまして、時間とともにだんだん伸びていって、6時間以上だともう30%ぐらいになっています。このような問題は、ほかにも同じような傾向が見られまして、朝起きられないとか、遅刻が増えるとか、学校に行けなくなってしまうとか、親子の間でゲームを巡っていさかいが絶えなくなってきて、お父さんやお母さんに殴られたりですね。

高橋さん:法律を作ったからといって、じゃあ、お子さんが守るかという問題じゃなくって、やっぱりこういう時間は家庭で、親子で話し合うべき。子どもたちからすると、ゲームは1日1時間というと、もう半分以上が反対意見なんですよ。大体「1時間でゲームクリアできません」とか、「このゲーム、1時間でどうやって名人はクリアするんですか」とか、そういうのばっかりだったんですね。自分が子どものときもそうなんですけど、上からがっと言われたら大体言うことを聞かないですよ。だから、言うことを聞かせるためには、どう引っ張ってあげればいいかなというのを考えないとだめだと思うんですね。

栗原:ただ、いま新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続く中で生活のリズムが乱れているという人も多いと思うんですけれども、暇を持て余した子どもたちに、親がこのタイミングでゲームを買い与えてしまうというケースもあるそうなんですけれども、リスクはどれだけあると考えていますか。

樋口さん:リスクはもちろんあると思うんですけども、私は、外来に今そうやって時間が延びてきている子どもたちが来たときに、この何にもない状況で責められないですよね。確かに、外の活動ができればいいんだけれども、それもほとんどできない状況だし、学校の友達とも会えないということで。私はどうしているかというと、彼らに、「君、今の状況で学校が始まったら ちゃんと学校に行けるのかい。少なくともそれは必ずできるようにしようね」というふうな話をしています。

武田:ゲームへの依存から、どう脱却すればいいのか。依存の背景にある問題に目を向けて、周囲の支えによってそれを克服しようという現場も取材しました。

ゲーム依存 抜け出すには

依存症に苦しむ本人ではなく、家族の側に働きかける取り組みが、いま成果を上げています。

ゲーム依存に悩む170組以上の家族の相談に乗ってきた、八木眞佐彦さんです。

周愛荒川メンタルクリニック 精神保健福祉士 八木眞佐彦さん
「お母様の安心感はどれくらい変わったでしょうか。」

八木さんは、家族が無意識のうちに使っている否定的なことばを、肯定的なものに変えて関係の修復をはかる「CRAFT(クラフト)」というプログラムを実践しています。

この母親は、息子がゲーム依存とひきこもりになり、1年半もの間悩み続けてきました。

母親
「本当に長い暗いトンネルの中に入ったような状態で、家族全員が落ち込んだ、本当に暗い気分でいたんですけれども。」

両親は「頑張ってほしい」と伝えることが息子にプラスになるのではと考え、部屋の前に千羽鶴と長文の手紙を置きました。

母親
「自分ができることとして、折り鶴を折ろうって決めて折っていた。」

しかし翌日、千羽鶴は息子に燃やされていました。

周愛荒川メンタルクリニック 精神保健福祉士 八木眞佐彦さん
「千羽鶴を置いたことは『ゲーム依存をしている君は病的だよ』というメッセージに伝わってしまった可能性があるんですね。」

八木さんは、手紙をやめ、小さな付箋にひと言だけ感謝のことばを添えるようアドバイスしました。

母親
「食器を片づけてくれたら『片づけてくれてありがとうね』って、本当に当たり前のこと。ありのままを主人と私が受け止めているよということが息子に伝わるように。今のままで何ひとつ責めてないよっていうところを意識して。」

すると、家庭の雰囲気が少しずつ穏やかになっていったといいます。

周愛荒川メンタルクリニック 精神保健福祉士 八木眞佐彦さん
「(息子の)自己否定感が高まっている可能性が高いところ、プレッシャーにならないポジティブなメッセージを付箋に書くことで、理解している雰囲気が伝わった。息子さんのつらさは徐々に緩和していったのかな。」

去年、息子は突然部屋を出てきて、思いを話し始めました。今は外出もできるようになり、ゲームもしていないと言います。

母親
「ただゲームをしているのではなく、心につらい悩みがあることを親が少しずつ気付いていかなければいけない。家族が理解してあげて、環境作りをすることがすごく大切だなと。」


2年前にeスポーツ学科を新設した、通信制の高校です。
120人の生徒が在籍していますが、今は新型コロナウイルスの影響ですべての授業をオンラインに切り替えています。

講師
「出欠をとります。元気にあいさつしてください。」

「はい」

この学校に通う生徒の9割が、かつて不登校やひきこもりを経験しています。

いじめを受け 不登校になっていた生徒
「学校に行けていなくて、人間関係でうまくなれなくて、逃げる先がゲームしかなくて。」

ゲーム依存症だった生徒
「学校でなじめなかったのが一番つらかったです。あの時ゲームをやっていなかったら、精神的にもっとつらかった部分があった。」

ここで行われる授業はすべて、ゲームやeスポーツに関わるもの。
同じ境遇の仲間と過ごす中で、自分の居場所を見つけ、ゲームとの適切な距離感もつかめるようになったと言います。

いじめを受け 不登校になっていた生徒
「同じ境遇にいたから分かる話もできるし、お互いに心の支えになれる。」

ゲーム依存症だった生徒
「ずっとゲームを一人でやっていると世間に戻りづらくなる、社会に。戻る場所を作っておいたほうがいい。僕は今できました。」

いじめを受け 不登校になっていた生徒
「ゲームは私の中で一番大切なものであって、本当に一番そばにあるものですね。悪い方にも使えるし、ものすごくいいことにも使える。これから(ゲームの見方が)変わっていったらと思います。」

ゲームとうまくつきあうには

栗原:みんな共通して話していた、あるキーワードが「居場所がない」ということだったんです。

樋口さん:やっぱり自分の居場所がないとか、あるいは、特に外来で診ていると、コミュニケーションに自信を持っていない子どもたちが非常に多くて、現実になかなか苦しい方々が結構いらっしゃるんですね。治療にとって何が大事かということなんだけども、単にゲームの時間を減らすとか、やめるとかっていうことだけではもう不十分で、減らしたゲームの時間を現実の生活が穴埋めする、補うことができると安定した回復が望めるんですね。こういう特性を持った子どもたちは、このようなことだったらたぶん現実の生活をもうちょっと豊かにできるんじゃないかということを、いつも悩みながら、ご両親と相談しながら治療していくというのが現実の状況ですね。

武田:なるほど。本当に若いときというのは自信もないし、人とうまくコミュニケーションを取れないというのは、僕もそうでしたし、多くの人がそうだと思いますけれども、ゲーム以外のところで何か自分はこれだと思えるようなものを持ってくれるといいですよね。

樋口さん:お父さん、お母さんが一番知っているはずなんですよ。なので、やっぱりお父さん、お母さんと話しながら、じゃあこの子は一体どういうところだったら自分の自己実現ができるのかということを一生懸命考えて、それを模索していくっていうのはすごく大事だと思います。

高橋さん:私としては、このビデオゲームというのはツールとして使っていただくのが本当はいいと思うんです。例えば、小学生の小さいお子さんでしたら、おじいちゃんと一緒にプレーすることで会話をすることができるとか、そういう いい方向に使ってくれると、この業界にずっといてよかったなと思えるんですけどね。いつの時代になっても親は子どもを心配するのが当たり前みたいなものがあるから、これはもう何をやってても心配になって見るんですけど、それをうまく使ってやることが、その子を伸ばすきっかけにもなるというふうに考えればいいと思うんですね。

武田:ゲームとどう向き合っていくのか、こんな声もあります。

作家 石井光太さん
「家の中で、ゲームのルール作りをするというのは基本中の基本だと思うんですね。ただ、家庭自体がうまく機能していなくて、親自体がいない、ほとんど帰ってこないといった状況の中で、そういった家庭だと、どうしてもルールを作って守るということはできないと思うんですね。そうすると、このルール作りができる家とできない家というのはちゃんと切り分けて考えていく必要があるのではないのかなというふうに思っています。僕たちがここで忘れてはならないのは、社会のほうがきちんとその子どもたちの立場に立って理解をして、そして、そのまま受け入れてあげるということが大切だと思うんです。」

武田:樋口さん、どういうふうにお感じになりますか。

樋口さん:ご両親のほうが、かなりレベルの高いところを求め過ぎた。例えば、今まで5時間ゲームをやっているお子さんに、1時間にしろ、場合によっては30分にしろという話をしたりするんですけど、こういうのって なかなか受け入れられないですよね。なので、私は、ほんの1時間でも30分でも減らすというようなことを本人が言うのであれば、まずはそれをやってみましょうよと。ご両親のほうが少し柔軟性を持って取り決めをしていったほうがいいのかなと。特に、本人に決めさせるというのは結構大事なことで、それが もしうまくいかない場合、多くはうまくいかないんですけれども、第三者に相談をすることが大事だと思うんですね。例えば、学校の先生とかスクールカウンセラーに相談してみる。それでもうまくいかない場合は、相談機関に相談する、あるいは、医療機関を受診するのがいいと思うんですね。

武田:きょうは、本当にありがとうございました。
番組の冒頭でご紹介した、重いゲーム依存に悩んでいた滝沢さん。支援につながることで大切なものを見つけることができたと言います。


15年間、自宅でゲームに依存してきた滝沢さん。
病院での治療を続けながら、去年 就労支援の施設に通い始めた。

滝沢拳一さん
「(病院の勧めで)就労移行をやっていて、セルフケアで自分の状態を管理するとか。」

そこには同じ境遇の仲間がいた。

悩みを打ち明け、励まし合う中、何かが変わったという。

滝沢拳一さん
「自分と同じ人がいるから大丈夫だって思えたんですよ。現実でも必要としてくれる人がいると初めて分かって、現実でも頑張ってみようかと思えた。現実にいてもいいよ、みたいに認められるって感じ。」