クローズアップ現代

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2018年12月4日(火)
宅配ドライバー争奪戦 ~ネット通販拡大の舞台裏~

宅配ドライバー争奪戦 ~ネット通販拡大の舞台裏~

宅配業界が転機を迎えている。大手宅配会社は長時間労働などが問題となり、当日配送などサービスの見直しや送料値上げに踏み切った。そこに“新興勢力”といわれる中堅物流会社が次々参入。ドライバー争奪戦が激化している。ある会社はネット通販の当日配送を積極的に受注し、ドライバーには高収入をうたい大量確保を進めている。「安く・早く・いつでも届く」。その便利さのかげで激しさを増す宅配戦線。持続可能な業界の姿とは?舞台裏に密着した。

出演者

  • 麻木久仁子さん (タレント)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

宅配ドライバー争奪戦 ネット通販拡大の舞台裏

何でもすぐ手元に届く宅配サービス。生活に欠かせませんよね、麻木さん。

麻木久仁子さん
「食品は最近、アマゾンフレッシュで買う。ものすごく安いのよ。サバなんか200円だよ。キッチンペーパー、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、シャンプー、ポンって押せば、ピピって来るので。宅配サービスの便利さに慣れてしまったから、ないと困っちゃう。」

でも麻木さん、今その便利さを揺るがしかねない事態が起きているんです。膨れ上がるニーズに対応できず、大手宅配会社では長時間労働や残業代の未払いが表面化。当日配送の縮小を余儀なくされ、送料の値上げに踏み切りました。

ヤマトホールディングス 芝﨑健一専務執行役員
「我々の努力だけで、なんとかしていくのは限界がきている。」

その大手が抜けた穴に飛び込んだのが、新興勢力とされる中堅の物流会社。今、新興勢力と大手との間で、しれつなドライバーの争奪戦が繰り広げられているのです。

中堅物流会社 社長
「大手さんも人が確保できない。私たちはそこがチャンスだと。」

ワンクリックですぐお届け。便利な暮らしの舞台裏で、一体何が起きているのでしょうか。

「ありがとうございました。」

首都圏を中心に事業を展開する、中堅の物流会社です。会社は去年(2017年)6月、大手ネット通販の宅配業務に新規参入を決めました。大手宅配会社が当日配送を縮小していくという報道が出た直後のことでした。

丸和運輸機関 和佐見勝社長
「この(ネット通販の)成長に我々が応えていかなくちゃならない。当日配送における、トップ企業を目指そうと。」

その後、10億円を投資し、わずか1年間で20か所以上の配送拠点を新たに開設。荷物の量は、新規参入した当時と比べて20倍以上に急拡大しています。

人材確保も進めるなど、今は利益度外視で投資を続けているといいます。

丸和運輸機関 和佐見勝社長
「(利益を)落としても、投資はしていく。お客様(ネット通販会社)も成長する、私たちも成長する、こういう関係を作りたい。」

しかし、業界は今、空前のドライバー不足。求人倍率は3倍を超え、激しいドライバー争奪戦が繰り広げられています。

大手宅配会社は、休日の確保や残業時間の削減を掲げ、正社員ドライバーの獲得を狙っています。一方、新興勢力のこの会社の売りは高収入。年間720万円を目安に、出来高次第で、さらに増額するといいます。そして、ドライバーとは個人事業主として契約する戦略を進めています。
中堅の物流会社で開かれた、ドライバーの新人研修です。以前は大手宅配会社の正社員だった人や他業種からの転職組など、この1年で200人以上が集まってきています。ドライバーにとって、自分の裁量で労働時間や業務量を調整できることが魅力だといいます。

元営業職の会社員(49)
「やればやっただけの収入が得られる。サラリーマンはやっても限界はある。」

元大手運送会社 社員ドライバー(31)
「(前職では)働き方改革が始まったことによって、残業時間の削減につながってしまった。労働単価はだいぶ下がってしまった。(個人事業主は)青天井なので限界がない。」

しかし、個人事業主ドライバーは成果とリスクが紙一重だともいわれています。今年(2018年)の5月、個人事業主として開業した、小林哲也さんです。運ぶ荷物は1日平均150個。およそ3分に1個のペースで届けています。

個人事業主ドライバー 小林哲也さん
「走らないと、数的に間に合わないですかね。」

出来高払いの契約では、不在の場合、報酬を得られない規定。当日配送や時間指定の客でも不在は珍しくありません。この日も2割は配送できませんでした。業務を終えたのは夜7時過ぎ。走りずくめの労働は12時間以上に及びました。こうした努力と引き換えに手にする1か月の売り上げは…。

個人事業主ドライバー 小林哲也さん
「25日出勤で95万2,572円です。」

一方で、けがや病気をした場合、会社からの補償は一切なし。急な休みが発生すれば、会社が新たなドライバーを手配する費用などを欠車代として支払う約束です。契約は原則1年ごとの更新。万が一、契約を切られれば収入は途絶えてしまいます。まもなく第2子が誕生予定の小林さん。たとえリスクを抱えても、今は高い収入が必要だと考えています。

小林さん
「(自分の)高校、大学の奨学金ですね、34歳くらいまで払わないといけない。」

「奨学金?」

小林さん
「母子家庭だったので。そこ(返済)で不自由させないために、それ以上に稼いでこないといけない。」

急激な業務の拡大によって、会社側もサービスに課題を感じています。タバコの臭いや配達先の誤りなど、消費者からの指摘です。

「赤が3件以上の項目。赤の部分は減らしていかないといけない。」

ドライバーを急増させたことで生まれたサービスのバラツキ。会社は対応を急いでいます。

丸和運輸機関 渡部貴之課長
「品質が非常に悪かったり、生産性が非常に低いといった部分が原因で(荷主との契約を)切られてしまうリスクも正直ございます。」

早くて便利の象徴、当日配送に懸ける中堅物流会社。今後2年間で、1万人までドライバーを増やす予定です。

丸和運輸機関 和佐見勝社長
「ビジネスですから、リスクはあります。お客様の対応ができなければ期待されませんので、我々は期待に応えると。」

ゲスト 麻木久仁子さん(タレント)

鎌倉:深刻な人手不足の中、大手と新興勢力で激化するドライバー争奪戦。今やドライバーを確保したいのは、宅配会社だけではありません。ネット通販会社も自ら宅配サービスを展開しようとしています。大手IT企業の楽天は、独自の配送サービス「Rakuten—EXPRESS」を展開。そして家電のヨドバシカメラも「ヨドバシエクストリームサービス」を開始。これ、配送はヨドバシカメラの社員が行い、最短2時間30分以内に荷物を届けます。このように、ドライバー争奪戦、ますますしれつを極めているんです。

武田:ネット通販をよく利用されるという麻木さん。
どのぐらい利用されているんですか?

麻木さん:ほぼ毎日のようにお届け物がある感じで、もううちに来てくださる方は、ほとんど顔なじみという感じになっているんですけれども、やっぱり言われてみれば、ここ1年ぐらい、小さい会社というんですか、今まであまり耳なじみのなかったところから届いているなあ、なんてことも感じ始めてはいたんですけれど。

武田:便利ですけれども、その裏でこんな争奪戦がありました。

麻木さん:本来、これだけドライバーさんが不足だって思う、争奪戦だっていうんだったら、普通に荷物の値段が上がるというのが普通だと思うんですけれども、どちらかというと感覚としては、どんどんどんどん、これは無料にできますよとか、配送料安くしますよ、みたいなサービスも増えていたりして、そのへん、どういうふうにひょうそくが合っているのかなというふうに思いながら見ていましたね。誰が一体、どういう形でリスクを背負っているのか。

武田:VTRでご紹介した、物流会社の社長の和佐見さんとも中継がつながっています。和佐見さん、よろしくお願いします。

和佐見さん:はい、こんばんは。よろしくお願いします。

武田:大手が働き方改革などを理由に手を引く中で、業務を急拡大されています。ドライバーにも高い報酬を支払っていらっしゃいますけれども、大丈夫なんでしょうか?

和佐見さん:企業経営というか、私たちは無理したら長続きはしないと、こういう考えで、無理がなく、日々改善、改革というか、問題解決のために努力して経営に取り組んで、また働く人たちが本当に喜びを持てるような職場作り、環境の整備、そういうことに取り組んでおります。

武田:でも、利益を度外視してというふうにもおっしゃっていましたけれども、やっぱりドライバーを集めるのは大変なんですか?

和佐見さん:利益を度外視するっていうのは、創業の時。スタートの時は、利益よりも投資型になりますから、そういう言葉になると思いますけれど、われわれはもうビジネスですから、きちんと収益が確保できるような戦略を持って対応しているのは事実です。

麻木さん:今、VTRを拝見していましたら、誤配とか、それから時間に間に合わないといったようなクレームが入ることもあるというお話なんですけれど、一生懸命やっていても、やっぱりなかなかうまく回らないっていうこともあったりする。そういうクレーム対応みたいなものは、ドライバーさんだけの問題でもないと思うんですよね。そのへんはどんなふうに対応策を考えていらっしゃるんでしょうか?

和佐見さん:例えば配達にお伺いした時にお留守であると、再配達をしなくちゃいけないわけですね。こういう問題というのは、我々はいわば、今までは今までとして、今後の問題としては、お客様に指定をいただく時間帯にお届けするっていう問題を解決、そうやって取り組んでいかないと、問題解決できないと思っております。

武田:問題はもちろんあるんだけれども、それはこれから規模を拡大していきながら改善もしていくんだということなんですね。

和佐見さん:そうですね。日々、改善、改革です。

武田:また後ほど伺います。

鎌倉:激しさを増すドライバー争奪戦ですが、しかし業界全体を見てみますと、全てのドライバーが高収入を得ているわけではないんです。そこには、多重下請け構造というものがあります。いくつかの中間業者を経由して仕事を請け負うため、そのたびに手数料が引かれるなど、弱い立場に置かれがちだというんです。

宅配ドライバー争奪戦 取り残される人も…

以前、個人事業主ドライバーをしていた、この男性。大手宅配会社から仕事を受けたA社から、さらに業務委託される、いわゆる孫請けでした。

元個人事業主ドライバー
「だいたい普通の方で40〜50万は稼げると。」

平均月収40万円以上と書かれた広告を見て応募した男性。しかし実際には、月に25日働いて、手取りは11万円ほどだったといいます。報酬は配った個数で決まりますが、1個当たりの単価は40円から165円。売り上げの12%を、手数料としてA社に支払う契約だったといいます。

元個人事業主ドライバー
「時間給出すと、本当に哀れなもんですよね。(下請の)1番底辺じゃないですか。手も足も出ない状況ですよね。私も23キロ痩せました。もうこんなに痩せてガリガリになっちゃいましたね。」

武田:和佐見さん、高い収入を得ているドライバーもいる一方で、今、ご覧いただいたように、業界の中には下請け構造の中で、なかなかいい待遇を得られないドライバーもいる。これは、なぜこういうふうになっているんでしょうか?

和佐見さん:やはり今、孫請けという問題があるわけですけれども、こういう問題を解決していかないと、下請けの下請けという構造の中で、最終的には手取りの金額が少なくなると。私どもの会社のことをいいますと、孫請けは禁止しています。一切やりません。私どものほうは、開業者のみ相手にしていきますので、そういう点は全く問題を起こさないような仕組み作りをしております。(※注1)

武田:直接、個人事業主さんと契約するということなんですね。

和佐見さん:そうですね。私が言っているのは、わが社は保証するわけですね。年間における720万の保証です。そういう保証をきちんとする。(※注2)

麻木さん:ドライバーの方に十分な収入が得られるようにというお考えのもとだと思うんですが、それだったら社員として雇って、十分な給料を払うということでも同じかなという気もするんですが、違うんでしょうか。やっぱり私自身も実は個人事業主なので、その個人事業主の不安定さというものが非常に大きいなっていう感覚があるんですが、社員じゃだめなんですか?

和佐見さん:私たちは、正社員もはっきり申し上げて、サービスマンとして活躍してます。その正社員の人材不足という問題が確かにあります。しかし、開業におけるメリットというのは、また大きなメリットがあるからこの仕事に取り組んでいるわけです。私たちの考えは、やっぱりその会社の仕組み作りというか、収入がきちんと安定した生活ができるような対策をしていかないと、本当に喜んでやれる人というのは少ないと思います。

麻木さん:例えば、契約期間が1年更新というお話でしたけれども、そのへんも、もうちょっと安定性とか、そういうお考えはいかがでしょうか?

和佐見さん:基本はわが社は5年契約でして、更新というのは1年。(※注3)開業者からもきちんと聞いて問題あるかないかとか、そういう面談は1年ごとに更新を図る。そういう一つの場を設けているのは事実です。

武田:麻木さん、個人事業主という形態を望まれるドライバーもいるということですけれど、やっぱり麻木さんはちょっと不安定じゃないかという思いがあるということですね?

麻木さん:やっぱり病気することもあります、事故を起こすこともあるかもしれないですし、どうしてもやっぱり形として、荷主さんがいる、それからその会社がある、そして私たち消費者がいると。ドライバーさんっていうのは、その構造の中では、やはり一番弱い立場にならざるをえないということは、構造としてあると思うので、いかにそこの立場に寄り添ったシステムができるかということは考えていかないといけないんじゃないかなと思いますね。どれが正解かっていうのは難しいですけれどね。

武田:どうすればそのドライバー不足を解決できるのかということですけれども、今、ITを駆使して、その課題解決に取り組む動きも出てきています。

※生放送で出演された物流会社社長の発言の内容について、不正確な部分がありました。下線を引いた部分について、正しくは以下の通りです。

※1:会社によりますと、この会社では実際には孫請けを禁止しておらず、業務委託した協力会社が個人事業主に委託するケースもある、ということです。

※2:実際には年間720万円の売り上げを保証しているわけではなく、条件によっては720万円を下回ることもあるということです。

※3:VTRで紹介した通り、実際には契約は原則1年ごとの更新です。

ITで宅配革命!? ドライバー不足解消なるか

都内にオフィスを構える物流のベンチャー企業です。

この会社では、荷主と宅配ドライバーを直接マッチングするアプリを立ち上げました。例えば、ネット通販会社などの荷主から依頼を受けると、距離や拘束時間を基に運送料を算出。中間業者が減った分ドライバーに支払われる報酬も相場より高くなるといいます。現在、このアプリには全国6,000人以上の個人事業主ドライバーが登録。ネット通販会社にとっても、急な発注にも対応できるというメリットがあるといいます。

CB cloud 松本隆一社長
「ドライバーが仕事した功績、それに見合った対価が落ちるような仕組みを提供していく。荷主さん(ネット通販会社)にとって、当日にオーダーがあふれてもサービスが破綻するリスクがない。」

1年ほど前からこのマッチングアプリを利用している、加藤芳彦さんです。ふだんはイベント企画の会社を経営しています。加藤さんは、休日の空いた時間を利用して宅配の仕事をしています。いわゆる副業です。

加藤芳彦さん
「イベントのスピーカー運んだりとか、照明機材運んだり、どうせ(車を)持っているんでフルに活用できるように。」

この日は、神田から築地までオフィスの備品を運びます。1時間かけて業務を行い、売り上げはおよそ4,000円。週に1回ほどの頻度で宅配の仕事を入れ、毎月10万円程度の収入が得られているといいます。

加藤芳彦さん
「隙間時間にはもってこいですね。イベント業なんで、閑散期というのがどうしても出てきちゃうんで、(仕事を)何本かもっておいた方が、これからの時代としてはいいのかな。」

マッチングアプリを開発した会社では、全国に埋もれている人材を有効活用すれば、宅配サービスの可能性は広がるとしています。

CB cloud 松本隆一社長
「個人事業主が車を持っていたと理解すれば、いろいろな仕事の可能性は広がる。」

宅配ドライバー争奪戦 ネット通販拡大の舞台裏

鎌倉:ただ、このマッチングアプリが全てを解決してくれるわけではないんです。人手不足がより深刻な地方では、ビジネスが成立しにくいことや、人身事故が起きた場合、賠償責任をドライバーがすべて負う点など、まだまだ課題もあるんです。一方で、このままでは宅配サービスそのものが持続できなくなると指摘する専門家もいます。物流業界における雇用問題に詳しい川村雅則さん。「過剰な『安い・早い・便利』のコストをドライバーに押しつけてきた。ネット通販会社などの荷主や物流会社、あるいは消費者が適切に負うべきだ」と指摘しています。

武田:和佐見さん、送料の値上げですとか、サービスの縮小といった動きもありますけれども、そうした消費者にも、ある程度の負担が必要じゃないかという議論については、どういうふうにお考えですか?

和佐見さん:やっぱり消費者の皆さんに負担をかけるということよりも、サービスの質を高めながら、お客様にご満足をいただいた上での料金改定とかはあってよいかと思いますけれども、まだやるべきことは、私たちの段階であると、こういうことを言えますね。やることはやって、その上に立っての改定に取り組むという考え方です。

武田:なるほど。分かりました、ありがとうございました。

和佐見さん:どうもありがとうございます。

武田:業界側としてはそうなのかもしれませんけれどもね。

麻木さん:業界側としてはそういうふうにおっしゃるのは、そうだろうなと思うんですけれど、私は一消費者としては、やっぱり不在の時に1円にもならないんだとか、そういうことをよしとはやっぱり思わないんですね。さっきもあったように、消費者も当然、背負わなきゃいけないコストっていうのもあると思うので、例えばこれからだったら、もう今の時代、技術的にはAIだとか、ビッグデータとかいっているんですから、いつもいつも時間に行ってもいない人とか、そういう人はちょっと高くなるとか、きちんとした消費者の場合は少しポイントがつくとか、なんかいろんなことが技術的にも可能だと思うし、もっと言っちゃうと、例えば宅配ボックスだって、もっともっと普及してほしいと思うんですけれど、今、問題はそういうことのコストをだれが担うのかっていうことが見えてこない。もしかしたら法律的な何か後押しも必要なのかなとか、そんな気もしますね。

武田:どんどん便利になるこの宅配サービスですが、その裏には、リスクと背中合わせに働いているドライバーの姿が印象的でした。人手不足が深刻化する社会で、この便利さは持続可能なのか、さまざまな業界にも通じる課題だとも感じました。