クローズアップ現代

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2017年10月19日(木)
追跡!マンション修繕工事の闇 狙われるあなたの積立金

追跡!マンション修繕工事の闇 狙われるあなたの積立金

コツコツためた、あなたの積立金が知らぬ間に奪われているかもしれない…分譲マンションで行われる大規模修繕工事。そのウラ側で悪質な設計コンサルタントが工事業者に巨額のバックマージンを要求、住民に損害を与えているケースがあるという。事態を重く見た国が注意喚起を行うなど、問題は広がりを見せている。マンション老朽化時代、修繕待ったなしの物件が急増する中、多くの人が被害に遭っている可能性も?対策を考える。

出演者

  • 山岡淳一郎さん (ノンフィクション作家)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

あなたのマンションも? 狙われる修繕積立金

「現金ですね。領収書のない現金お渡しします。あの人ら、うまいこと考えてますよ。お金の取り方、上手です。」

私たちがマンションを修繕するためにためている積立金が悪徳業者に狙われているといいます。

マンション住民
「許せないですね。マンションを食い物にしてる。」

マンション住民
「ちょろまかすというか、完全になめきってますよね。」

悪質な設計コンサルタントが裏金を工事業者に要求。住民の修繕積立金を不当に奪い取っているというのです。

元設計コンサルタント
「お客さんは素人ばっかり。そこが一番狙い目。」

事態を重く見た国も、今年(2017年)に入って「通知」を出し、注意を呼びかけています。

国土交通省 担当者
「管理組合(住民)の利益と相互する立場に立つ。設計コンサルタントが発注に関与することのないように、十分に意識をしていただく必要がある。」

「マンション老朽化時代」に入り、大規模修繕工事は急増。多くの人々が被害に遭っているおそれがあります。不適切とされる業者の実態に迫るとともに、身を守るための対策も考えます。

田中:分譲マンションでは、十数年に一度「大規模修繕工事」が行われます。工事の内容は、外壁補修、防水対策、塗装など、マンションごとにさまざまです。しかし、どんな工事が必要なのか、住民は分かりませんよね。そこで、一般的に「設計コンサルタント」が住民に代わって修繕計画を立てるなど、工事を主導します。コンサルは「工事業者」を入札で選び、発注をしたり、工事が適切に行われているか監理・検査をしたりと、重要な役割を担います。今回、問題になっているのは、この大規模修繕の裏側で悪質なコンサルが工事業者に巨額のバックマージンを要求し、工事費を不適切な形でつり上げる場合があるというものです。その規模は、例えば修繕工事に3億円かかった場合、3,000万円〜6,000万円に及ぶこともあるそうです。

一体何が起きているのか。トラブルの詳しい実態に迫るため、複数の関係者に取材すると、驚きの事実が浮かび上がってきました。

追跡!マンション修繕工事の闇 関係者が語る“不適切”なカネ

修繕積立金を狙う手口とは、どのようなものなのか。トラブルに巻き込まれた住民が、匿名で取材に応じてくれました。マンションは築13年、およそ180世帯。それは初めての大規模修繕を控えた2年前のことでした。

マンション住民
「彼ら(コンサル)は、いかに修繕積立金から吸い上げるか考えている。」

住民でつくる管理組合は、設計コンサルタントA社と契約しました。しかし、A社が示した工事費用の概算を見て、住民はぎょっとします。3億6,000万円。余裕を持ってためていたはずの積立金、目いっぱいの額でした。

マンション住民
「ここまで金額が膨らんでしまうんだというのは驚いて、積立金がちょうどそのぐらいたまっていたんですね、組合の修繕積立金が。そこも何となくおかしいなとは感じてたんですけど。ちょうどぴったり使い切るぐらいで予算を組んでる感じはしましたね。」

住民らは、別の建築士に見積もりを依頼。すると、A社より1億円以上安い、2億5,000万円で済むという結果が出ました。住民らは、A社を介さずに直接工事業者と話を進める事にしました。すると、A社から内容証明郵便が届きます。「施工業者の選定に関与できないのであれば、業務を辞退する」と、一方的に告げるものだったといいます。
この不可解な事態の背景には何があるのか。かつて、あるコンサルタント会社で働いていた社員は、業界に広がる不適切な金の流れを指摘します。

元設計コンサルタント
「住民は知識がなく無知だから、そこが一番狙い目。」

元社員によると、悪質なコンサルタントは、まず格安のコンサル料を餌に住民と契約。工事費を見積もります。次に入札を行い、安い工事業者を選んだように見せかけます。住民は工事業者に代金を支払いますが、実はそこにコンサルへのバックマージンが含まれているというのです。コンサルは、取り分を増やすために見積もり額を目いっぱいつり上げているといいます。

元設計コンサルタント
「管理組合がいくら積立金を持っているか、当然握っております。その金額を使い切るほど、リベート(バックマージン)は増えますから、なるべく工事種目は増やします。お客さんは素人ばっかり。『これをやらなかったら大変ですよ』と言われたら、従うしか、一般の住民はないわけですね。」

一方、工事業者には、バックマージンを支払わざるを得ない理由があるといいます。関西の元工事業者が取材に応じました。

元工事業者
「(バックマージンを)払わなかった場合は、業界の中の各会社に『あそこの会社は、リベート(バックマージン)を出さない会社やから』、他の設計事務所にも言うわけですよ。当然その会社も、他のコンサルさん、設計事務所さんからも出入り出来なくなりますし、取り引きも出来なくなりまし、入札すら参加させていただけないし。」

元工事業者によると、入札に参加する業者はコンサルの裁量で集められます。入札額は、業者間での相談の上で、高値のままで維持。

受注する業者は工事ごとに持ち回りで決まるというのです。その際、バックマージンの額は工事総額の平均で10%。多い時は20%に及ぶといいます。

元工事業者
「(コンサルから)電話がかかってくるんですよ。どこどこの2億円の現場が決まったからって、自分のところにやってもらうから。それを上手にして、(入札額を)2億円ちょいにしてくれとかね。(マージンの)パーセンテージを、先生なんぼにしたらよろしいですか言うたら、今回はちょっと金額大きいから、9パーセントにしようかとか。」

「バックマージンは、ありましたか?」

元工事業者
「僕のやった現場は、すべてあったと思います。思うというか、ありましたけどね。」

バックマージンで損害を与えられた上、「手抜き工事」までされたと訴えるケースもあります。
築26年、およそ20世帯のマンションでは、去年(2016年)2回目の大規模修繕を行いました。住民が匿名で取材に応じてくれました。管理組合は、格安の設計コンサルB社と契約。すると、工事費用はここでも積立金とほぼ同額の4,000万円近くに上りました。問題は、それだけではありませんでした。

マンション住民
「工事が終わったという説明もないし、ちょっと待ってと、まだうちのベランダのタイルも浮いてるし。」

工事の内容に疑念を抱いた住民は、別の建築士に検査を依頼します。すると、外壁などに次々と工事の不備が発覚。タイルのひび割れや剥がれなど、判明しただけでも40か所以上もあったのです。その後、住民たちは工事業者にやり直しを求めましたが、一部の補修工事にしか応じませんでした。

マンション住民
「バカにしてますね。完全にバカにしたやり方です。ひどいやり方をなさったなと。」

ずさんな工事が行われた背景には何があるのか。元工事業者によると、業界では、コンサルによる工事の検査が甘くなっている実態があるといいます。

元工事業者
「(コンサルの)先生からご指摘受けて是正したと出すわけです、格好だけね。検査でも(現場に)行ったことにして、適当に作って書いて、指摘あげたことにして。」

また、バックマージンを取られる工事業者の側も、利益確保のために手を抜きがちだといいます。

元工事業者
「施工業者としたら、利益をもうちょい欲しいわけです。塗装や防水剤を、本当は3回塗らなあかんところを、2回にしたり1回にしたりというやり方で(コンサルに)了解していただく。」

「罪悪感とかないんですか?」

元工事業者
「慣れてきてはるんちゃいます。それが普通なんですって。それが普通、この業界の普通なんです。」

追跡!マンション修繕工事の闇 トラブルの実態は?

ゲスト 山岡淳一郎さん(ノンフィクション作家)

VTRに出てきたコンサルタントを行うA社、B社に取材を申し込んだところ、A社は「国の通知を受け、業界として適正化について協議をしているところであり、現時点では意見を述べる立場にない」と回答。B社は「指摘された事実はない」と否定しています。

田中:修繕工事で広がっているというバックマージン。しかし、「法的責任を問うのは難しい」と専門家は指摘します。マンション問題に詳しい弁護士によりますと、「住民の側に立つべきコンサルが義務を果たさずに損害を与えた場合は損害賠償を請求できる」そうです。また、「コンサルが『故意』に損害を与えたことが証明されれば、背任罪に問われる可能性がある」そうです。ただし、手抜きを見逃したことや、裏でバックマージンを受け取ったことを立証しなければならず、実際は不正を告発するのは簡単ではないといいます。また、公正取引委員会によりますと、入札に関し、「事前に特定の業者の間で話し合い、価格競争を制限した場合は独占禁止法違反にあたる」といいます。ただしこの場合、罪に問われるのは工事業者のみ。入札を主導するコンサルタントは対象外となるといいます。

長年、マンション問題を取材してこられた、ジャーナリストの山岡淳一郎さん。
業者は「これが普通だ」と言っていたが、どのくらいこういった状況が広がっている?

山岡さん:私もずいぶん、それは取材して業界の人たちにも聞くんですが、なかなかその数字というかですね、何割いってるというようなことに関して、彼らは口を濁すんですね。ということは、逆に言うと、相当見えない範囲でこれが広がっているなと。私の実感では、やはり透明にやっている業者の方が少ないのではないかなというような感じがしていますね。

なぜ、こういう状況になっている?背景には何がある?

山岡さん:これは、実は建築の市場の問題とも大きく関わってまして、バブル崩壊以降、新築の住宅の数がぐっと減りました。それまで一級建築士というのは新築専門で造っていたんですね。しかし、そこでだんだん仕事が少なくなって、そして、マンションの改修業界に入ってくると。ところが、それは言ってみれば、隙間みたいな形で成り立ったものですから、自分がやった仕事に対して、いくらのお金が適正かというような、そういう基準というのはなかったんですね。曖昧な状態でマーケットだけが広がってきて、こういうことになっている。とにかく安く請けてバックマージンで稼ぐというような、こういう形になっているんでしょうね。

それがどういう経緯で表面化してきた?

山岡さん:これは、去年の11月なんですけれども、このリフォーム関係の業界が、いわば内部告発的に「こういう実態があるんだ」ということをオープンにしたんですね。それを受けて国土交通省は、今までの国交省の対応よりも異例の早さで、今年の1月に「こういう状況が起きている。これは是正しなければいけない」ということを通達で出したんですね。そのことによってメディアも、この大規模修繕の裏のリベートの問題というのをいろいろ書いたり、放送したりするようになりまして、そこからぐうっと広がってきたと。

これまで水面下に潜っていたのは、なぜ?

山岡さん:一番大きいのは、やはりマンションに住んでいる方々が無関心・無知だということで、自分たちがひょっとしたら、ある意味では収奪されているんだけれども、そのことに関して、個別で点のような形でトラブルは起きていたんだけれども、全体的な情報共有というのがなかなかされなかった。これが大きいんじゃないかなと思います。

マンションの管理会社を通して工事を促される、勧められることが多いと思うが、管理会社は大丈夫なのか?

山岡さん:いや、その頼りの管理会社が、中には、やはり自分がコンサルタント的な役割をして、全体をコントロールして、バックマージンをというような形もあったり、あるいはコンサルタントを指定したりとか、場合によっては自分の息のかかっていない工事業者が、その仕事を取った場合に「ここは、うちの管理してる物件だから、あなた方は場所代を出しなさいよ」と。
(場所代?)
言ってみれば、通行料のようなものですね。そして、工事料金の5%とか、10%を取っていたという、こういうケースもありました。

マンション業界に広がる、こうした根深い問題に対して、私たちはどう対抗していけばいいんでしょうか。ヒントになる取り組みを取材しました。

マンション修繕工事の闇 トラブルから身を守るには?

バックマージンを一切取らないと宣言する設計コンサルタントがあると聞き、取材に向かいました。会社を設立して18年になる、須藤桂一さん。

設計コンサルタント会社代表 須藤桂一さん
「こういう音なんだけど、本来は。浮いてると。」

バックマージンを受け取った場合、報酬の3倍の罰則金を住民に払うことを契約書に盛り込んでいます。
須藤さんが悪質コンサルを見抜くポイントの1つに挙げるのが「入札の透明性」です。悪質なコンサルは、工事の入札に不自然な参加条件をつけることがあるといいます。裏で協力する会社だけを集める狙いがあるためです。

設計コンサルタント会社代表 須藤桂一さん
「例えば、この(規模の)マンションの大規模修繕工事で、資本金1億円以上。どう見ても、おかしいです。2千万とか3千万の(小さな)工事でも、資本金1億円以上とか。ほとんどの工事会社が見積もり参加できない、そんな仕組みになってます。」

須藤さんの会社では、入札の条件を一切設けていません。大手の会社から中小の工務店まで、のべ200社以上で競争入札を行うため、健全な価格競争が生まれ、工事費も大幅に下がるといいます。
そしてもう1つ、悪質なコンサルから身を守るカギは住民自身にあると、須藤さんは訴えます。実は、この日取材にお邪魔したスタッフも、大規模修繕を半年後に控えていました。

「工事会社も決まっちゃってるんですよ。」

設計コンサルタント会社代表 須藤桂一さん
「設計事務所どこですか?」

「分からないです。」

設計コンサルタント会社代表 須藤桂一さん
「管理会社どこですか?」

「いや、それも。来てるんですけど、ちょっと忙しくて。」

設計コンサルタント会社代表 須藤桂一さん
「一番の問題点は無関心ですよ。もう無関心じゃだめ。管理会社、設計事務所、工事会社がどこか。住民一人ひとりが、1世帯100万円ぐらい出すわけですからね。自分ちだと思って見てもらう。おかしいと思ったら声を出すというころをやらないと、そのまんま行っちゃいますよ。」

実際、住民が主体となることで、大規模修繕を成功させたマンションもあります。
京都市内にある築34年、185世帯のマンションでは、既に2回の大規模修繕を終えました。管理組合の理事、能登恒彦さんです。

能登さんは、初めての大規模修繕の際に、有志の住民を募って、修繕委員会を立ち上げます。しかし当初、住民の多くは無関心でした。

マンション管理組合理事 能登恒彦さん
「こういう工事をやるんだけども、いろんな意見がある方は、どんどんこう来てください。みんな、集まって来ないんですよね。」

そうした中、多くの住民を巻き込むことに成功した秘けつは、古くなったものを直す「修繕」から、より住みよいものにする「改修」への意識改革でした。能登さんたちは、建築士を招いて勉強会を開き、住民から「住みたいマンション」のアイデアを募りました。

雨で滑りやすかった入り口のタイルは全て張り替え。玄関は、車椅子でも通れるスロープに。自動扉も設置しました。更に、災害に備えた井戸水の給水所を全フロアに設置。住民の希望が形に変わっていく中で、積極的に参加する人が次々と現れてきたといいます。

マンション管理組合理事 能登恒彦さん
「下がったものを元に戻すんじゃなくて、更に上げるんだという気持ちです。キーワードは、楽しもうと、いいものを作ろう。楽しむこと、いいと思えるものを作っていこうということが、最終的には意識を変えていったんじゃないか。」

マンション修繕工事の闇 トラブルから身を守るには?

田中:では、トラブルから身を守るためにはどうすればいいんでしょうか。複数の現役コンサルタントや弁護士などへの取材から対策をまとめました。
まず、安いコンサル料には要注意。コンサルを選ぶ際に、複数からの見積もり「あいみつ」を取ってみて、契約料金が極端に安いところは怪しい業者の可能性があるため、避けた方がいいそうです。そして、金額の目安を知っておくこと。工事内容にもよりますが、修繕工事の見積もり金額が1戸当たり150万円を超える場合は高すぎる可能性があるので、セカンドオピニオンを求めた方がいいそうです。また、国土交通省が紹介する相談窓口を利用する方法もあります。住宅リフォーム・紛争処理センター、マンション管理センターです。連絡先は、ご覧のとおりです。

入札業者に条件をつけることは、良くないこと?

山岡さん:これは「1億円の資本金がなければ入札できない」というのは、これはちょっと現実的ではないなと思いますが、しかしやっぱり住民自身は、その工事業者がそれまでにどういうふうな工事をしてきたのか、どういうふうな経験を積んできたというのは、できるだけ入札前に集めた方がいいんじゃないかなと思いますね。

業界では、どんな対策を打ち出している?

山岡さん:工事業者の団体がこの4月から、この適正化に向けた協議会を作りまして、今、議論を重ねて、ちょうどこの11月にもその指針が出てくるということになっています。そこには2つポイントがありまして、1つは、これまで改修専門の一級建築士の全国的な団体というのがなかったんですね。これを何とか作る方向に持っていこうと。そして、その団体ができたことによって、自分たちで内部規律というか、これをしっかりさせる。できれば、その団体には管理組合の側に立つんだと。自分たちは、住民の側に立つんだというような宣言もしてほしいなと、私は思っているんですが。もう1つが、やはりその業務に関わる報酬がいくらなのかという基準を何とか作ろうとしている。国交省も、大規模なアンケートを取りまして、どういう工事にはいくらかかったかという、今、集めたんですが、実はその内容が非常に大きな差があって、かなりバラバラなんですね。なので、ここから基準を紡いでいくというのは、かなり大変なのかなとも思いますね。

マンションの住民は、この改修の問題にどう向き合っていけばいい?

山岡さん:VTRにもありますが、やはりその改修・改築というのを自分たちに課せられた、何かこう十字架のように捉えるのではなくて、むしろ面白がる、楽しがるというような、つまり改修することによって、住環境というのはものすごく変わってくるわけですね。私が取材したあるマンションは、大阪のマンションなんですが、自分たちで住民が主導で、もう2回大規模修繕をやりました。工事業者も全部自分たちで決めて、最終的にここの住民たちは、最上階に露天風呂を作りたいと、そんなことまで言って、みんなでまとまってやっている、そういうふうなマンションもあります。そういうふうな意識の持ち方で、かなりこの修繕に関しての取り組み方というのは変わってくるのではないかなというような感じがしています。

こうしたトラブル、マンション管理をつい他人に任せてしまいがちな私たちの姿勢につけ込まれてきた面もあるということが分かりました。自分たちの住まいをどう良くしていくか、住民自らが考えることが、結果的にトラブルから身を守ることにつながるんだと思います。