12月に行われるノーベル賞授賞式、物理学賞に輝いた梶田隆章さんの研究は、物理学の常識「標準理論」に修正を迫る大発見だが、道のりは簡単ではなかった。1988年小柴昌俊さんのもとで、観測データと理論値のわずかなズレに気づいた梶田さんは、その謎を解明する研究に取り組む。しかし、観測用の1000トンもの水に混入する放射性物質の除去という難問や数千本のセンサーが壊れてしまう事故など次々と難題に直面したのだ。そうした中、研究チームを奮い立たせたのが、“鬼軍曹”とも言われた戸塚洋二さんだった。梶田さんたちは、睡眠時間を削り文字通り寝食を共に作業に没頭、日本独自の緻密な観測態勢を作り上げた。しかし2008年、戸塚さんはがんで亡くなる。リーダー亡き後の今回の受賞に、梶田さんは「チームみんなの力で獲得した」と語る。今回の研究は、宇宙の起源を解き明かす新たな粒子の発見や物質世界を説明する「大統一理論」につながるとされる。番組ではNHKにあるカミオカンデ関連の膨大な映像素材をもとに、世紀の発見の裏にあった人間ドラマを描き、日本の物理学が切り拓く新たな“知の地平”を伝える。
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