高度で先進的な医療を提供する医療機関で、患者が死亡する医療事故が相次いでいる。群馬大学医学部附属病院や千葉県がんセンターでは、腹腔鏡を使った手術のあと患者が相次いで死亡していることが明らかになり、遺族や医療関係者に大きな衝撃を与えた。取材から見えてきたのは、専門領域の縦割り意識や不十分な情報共有の仕組みが事故の見逃しを許し、現場の安全管理が機能しなかった実態だ。国は10月から、医療事故の原因究明と再発防止を目的とした「医療事故調査制度」をスタートさせる。制度では、速やかに事故の院内調査を行い第三者機関に報告することを義務づけているが、報告する死亡事故の判断基準があいまいな上、その判断が医療機関に委ねられていることから実効性に疑問の声もあがっている。事故防止に必要なシステムとは何か。いち早く取り組んだ大学病院の模索も紹介し、医療安全のあり方を考える。
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