演劇界最高の栄誉とされるトニー賞が発表される。俳優の渡辺謙さんが、ミュージカル部門の主演男優賞にノミネートされた。日本人俳優としては初の快挙だ。歌も英語もハンデを負いながら、55歳の年齢で勝手のわからないブロードウェイに飛び込んでの悪戦苦闘。敢えて挑んだのは役者個人としての求道心からだけではなく、大きく変化するアメリカのエンタメビジネス事情が関係している。ここ数年、ブロードウェイとハリウッドは相互乗り入れを強めており、シナリオや人気スター、観客、投資マネーを世界中から吸い寄せている。より強大なソフト産業としてパワーを高めながら、アジア市場などへの展開を強める戦略だ。そうした機運を逃さず、中韓などの映画・演劇人は活動をボーダーレス化させているが、日本の映画・演劇人は内向きという。危機感を持っていた謙さんの今回の挑戦、エンタメ界や若い世代の日本人への発奮材料となるか。
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