今年度のカンヌ・ベネチアの両映画祭で1人の日本人映画監督が快挙を成し遂げたことはほとんど知られていない。半世紀前「二十四の瞳」などで日本中を泣かせた映画監督、故・木下惠介。ライバル関係にある2つの映画祭で、同じ監督の作品がクラシック部門ダブル上映という極めて異例の快挙。今、世界中で木下作品がリバイバル上映され、再評価の機運が高まっている。かつては黒澤明と並び称されたが、高度経済成長期に入って以降その評価は高くなく、目を向けられなくなっていた。それが今、注目され始めた理由として挙げられるのが、木下の圧倒的な「共感力」。戦争や差別・暴力にふみにじられる庶民の慎ましい生き方に共感を寄せ続ける力だ。なぜ今、「共感」なのか。そして「究極の共感力」とは何か。木下の生い立ちや代表作誕生の舞台裏に迫りながら、弟子で脚本家の山田太一さんと共に考えていく。
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