減らない身の周りの製品や食品の事故。消費者の安全への関心と欲求は高まり続け、今年十月には事故原因と責任を検証する国の機関として、消費者安全調査委員会が発足した。より一層の安全対策が求められることになった企業だが、「安全コスト」の爆発的な膨張を商品価格に転嫁できず四苦八苦している。この十年で6倍、1年で千件近くにも達する食品リコール。信用のために「リスクは限りなくゼロ」をアピールせざるを得ない企業は、とにかく回収。過剰反応に拍車がかかり、3割の企業で安全コストは1.5倍以上に増加、1回数億の回収費用で倒産も続出している。その一方で深刻なのは、消費者側のリスク回避能力の低下。核家族化で「家庭の常識」が継承されず、高齢化で新製品についていけない。消費者と企業の情報ギャップとディスコミニュケーションが、さらなる事故を招く悪循環となっている。安全をめぐるコストのあり方や適正値を探るための、企業と消費者のリスクコミュニケーションについて考える。
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