世を去って60年以上経つにもかかわらず、太宰治の作品群は現代の若者層に異様なほどの人気を誇っている。特に教育関係者が驚くのは、中高生の読書感想文に、教育現場では敬遠されがちの『人間失格』が圧倒的に多いこと。出版部数も前年比550%、多くが10代20代の若者である。背景には「時代の空気に違和感をおぼえた若者たちの共感を呼んでいる」ことや「句読点を多用するブログに似た太宰文学が受け入れられやすい」などの理由があるという。一方で、この人気を利用して、太宰文学の「巧みな一人称語り」を題材に、対人関係を苦手とする高校生に、コミュニケーションのあり方を教えようという試みも始まっている。留まるところを知らない太宰人気の背景と、今、若者が太宰から学ぶべきものは何かを考える。
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