増加する認知症の人に対し、今世界中で「パーソン・センタード・ケア(本人中心ケア)」が注目を集めている。本人の意志を最優先して医療や介護を進めるケア方法である。背景にあるのは、認知症の早期診断技術の向上。年若く、意識や体力が十分に残っている段階で認知症と診断される人が増えたことで、「何も分からない、心が失われる」とされてきた認知症の“常識”が変わったのだ。先進地オーストラリアでは、認知症の本人が症状の詳しい説明を受け、できる範囲で治療や介護方針の決定にも参加できる体制が整いつつある。日常的なケアも、本人の話をじっくり聞くことから始まり、カウンセリングや介護の専門家がサポートする。これに対し、日本では取組みが始まっているものの、専門人材の不足やコストなどが壁になり、ごく一部に止まっている。認知症と早期診断された多くの患者が行き場を失っているのが現状だ。日本とオーストラリアの現場から、認知症ケアの新潮流の行方をさぐる。
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