私たちが毎日使っている鉄道列車の強度について、今、日本で初めて国を挙げての本格的な研究が進み始めている。きっかけは、107人の犠牲者を出したJR福知山線脱線事故。これまで日本の鉄道行政は「いかに事故を起こさないか」をテーマに列車制御装置の開発などに重点を置き、車両の強度について基準を全く設けてこなかった。鉄道事業者も軽くて燃費の良い、効率的な車両開発に重点を置いてきた。3年前の事故は従来の車両が衝撃に対していかに脆いかを露呈。国もようやく事業者や車両メーカーと共に研究会を設置。乗客を守る車両開発や新たな基準作りの検討を始めている。しかし、車両を強化すると莫大なコストがかかり、重くなってスピードなど効率性が損なわれるなど、課題も山積である。「事故を起こさない」という発想を転換し、「事故は起きるもの」として車両強度向上を模索し始めた日本の鉄道行政。その現状と課題を描く。
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