今、製造業の現場で「労災隠し」や「労災とばし」などのトラブルが多発している。三重県にある大手電機メーカーの工場で起きた請負会社社員の転落事故。ところが、労災の申請書類には、全く別の場所で事故にあったという虚偽記載がされていた。こうした「労災とばし」や「労災隠し」で送検された件数は、厚生労働省によれば10年前のほぼ倍。急増の背景には、製造現場に広がった派遣や請負といった雇用形態がある。派遣会社が大手メーカーとの関係悪化を恐れて労災を隠すケースや、コスト削減のため労災保険そのものに加入していないケースも多い。さらには、労働者を個人事業主として契約し、労災などのコストを肩代わりさせる「個人請負」も増加。安全に関する責任が、大手から派遣会社へ、さらには個人へと押しつけられていく構図となっている。景気回復の陰で多発する、労災トラブルの実態と背景に迫る。
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