夏の高校野球福島大会リポート④ふたば未来 もう一つの戦い

20日のいわきグリーンスタジアムの第3試合の試合前、

創部5年目で初の4回戦進出を狙うふたば未来学園の円陣で、

1人の選手が1着のユニフォームを手に持っていました。

一体誰のもの?

 

実は選手たちとは別の場所で戦っていた人がいました。

鈴木智之部長です。24歳の鈴木部長は、大学卒業後講師となって2年目です。

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この日は福島県の教員採用試験の日。

鈴木部長は受験のため、

試合開始に間に合わなかったのです。

 

前の日の夜、鈴木部長のもとにキャプテンの高橋佑輝選手からメッセージが。

「智之先生、明日絶対勝ってくるので採用試験頑張ってください」。

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鈴木部長は高橋主将に電話を掛けました。

「絶対勝ちに行くぞ。球場に入ってから

試合が始まるまでの気持ちの切り替えをしっかりやりなさい」

と伝えました。

 

高橋主将は電話を切ったあと、鈴木部長のことばを部員全員で作る

LINEのグループで共有したそうです。

高橋主将。

「鈴木先生の分まで頑張ろうと思いました」。

 

試合当日。

雨の影響で試合の開始時間が大幅に遅れました。

 

ここで効いたのが、鈴木部長の言葉でした。

 

高橋主将は、試合前にもう一度鈴木部長の昨夜のことばを伝えました。

すると初回に3点を奪うなど、相双地区のライバル

小高産業技術を序盤から圧倒します。

午後2時すぎに試験が終わった鈴木部長。

会場の福島市からいわき市へ向かう道中、

試合経過が気になってしかたがありませんでした。

 

鈴木部長。

「速報を確認すると初回に3点を先制していて

3年生が頑張ったんだなとグッときちゃいました」。

 

雨で試合開始が遅れたおかげで、鈴木部長は

1回裏に球場に到着できました。

チームは14対1の5回コールド勝ちで

4回戦進出を決めました。

 

一方採用試験の方は?

鈴木部長

「ベストを尽くせました」。

選手たち、そして鈴木部長の

“いつもと違う”

ほっとした笑顔が印象的でした。

 

高橋主将。

「次の試合も鈴木先生を含めて

チームの雰囲気を大事に、油断することなく戦いたい」。

(高校野球担当 中村記者)。



夏の高校野球リポート 戦国福島

投稿時間:14:43