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【第2回】発災時 データで命は守れるか ~車データ編~

2022/7/25

13.水道・電気・ガス 生かせるデータは多様に

 

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二瓶(東京理科大学):もともと、今回NHKでやろうとしていたことに比べて、いまの論点はギューッと小さくなりすぎていて、折角いろいろやってきたのにどうしちゃったのかなと思うんですよね。今、たまたま人流とか交通流って、なんとなく使えそうだしという流れで、本当はもっとまとめられようとされていて、水道・下水道、電気・ガスとか。本当はもっと大きい枠組みで、こういうデータをもっと集める必要があるっていう提言をやっぱりすべきなんじゃないかなって思います。今、目的が小さくなりすぎてしまっていると思っています。そういった意味で、検討会は3回じゃ終わらない気がしています。

 

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関本(東京大学):確かに、人流・車両通行実績に限った話ではないと思います。私もそういうつもりではありました。

 

捧(NHK):人流・車両通行実績が割と実現が近いのかなと思って絞っていましたが、「もっと広い話を」と本検討会の中でもニーズがあれば、広げていくべきと改めて思いました。

 

関本(東京大学):実際にデータを収集している企業さん、ITS Japanさんもあるので、もちろん先頭隊としては人流・車両ということになるとは思いますが、先の話もあると思います。

 

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畑山(京都大学):人命とか、避難とかを考えると、やっぱり人流・車両通行実績あたりになるのではと感じます。インフラ系はその後の復旧の話なのかなと。僕も電力のデータとかを持ってきたり、上下水道のデータも現状を聞いていたりしますが、「避難をするときに皆さん家の電気消すでしょ」って電気が消えたから避難した人がいるってなかなかならなくて。やっぱり携帯電話持っている人の方が、リアルな感じがするんですよね。ただ、復旧は、令和元年の房総台風みたいに、停電してしまったら、「スマホが使えるとかどうでもいいです」って話にもなるので、避難生活が長引いて二次的な災害が出てきますという対応に対しては、もっとインフラのリアルタイムデータを使うことで、対応可能になることもあるかなという感じはします。災害時とか直後を対象にするのか、もう少し先の、復旧まで対象にするのかで、「どのへんのリアルタイムデータを使っていくか」は変わってくるのかなという感じはします。

 

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関本(東京大学):フェーズによって必要なデータがかなり変わってきそうだというご意見、ありがとうございます。

 

14.「災害がこれから起こるかも」な時から データ提供は可能?

 

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畑山(京都大学):災害時の情報を提供しようという話になった際は、今現在は、警戒レベル5になると提供していると思うんですよ。「ほぼ災害発生が確定した」という時からは、当然災害の対応のためにこれは皆さん使えるからということで提供されると思うんですけど、今の論点案にある「警戒レベル3(高齢者等避難)からデータ連携を強めませんか」という話。地震はいきなり警戒レベル5になるので、割とわかりやすいんですけど、水害は特に、レベル3・レベル4あたりで収束して、レベル5にならないこともあるんですね。レベル4までは大量にいくんですよ。ものすごいエリアでレベル4になってしまうんですけど、そういう時まで適用するのか。災害とは言い切れないですが、災害になる可能性が非常に上がったという状態ですよと。防災をやっている側からすれば、そのフェーズから動いてくれた方がいいに決まってますと。何か起きる前から解析始めれば、起きたときにすぐに対応できるようになるんですけど、データを出す側からすると、明確に「被災した」という情報がないのに、行政のさじ加減で避難情報が出る・出ないが決まるレベルで、データを提供していくということが可能なのかが、事前に皆さんのコンセンサスを得ておかないといけないと感じました。

 

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関本(東京大学):そのあたり、ITS Japanさんは。かなり今はオートマティカルになっているので、コストが生じにくいのかもしれませんが、判断があいまいになると大変になると思うのですが。

 

畑山(京都大学):あと、データがひとり歩きして、いろんな「意図しない分析に使われていきました」という話になったときに困るという話も先ほどされていたので、発災したら、「命を守るための分析であれば」と目をつぶれるかもしれませんが、「何も起こりませんでした」となったときのデータが流れていく可能性もあるわけで。そのへんも考えないといけないかなと思います。

 

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石毛(ITS Japan):現状の運用をご説明すると、地震の場合はオートマティカルに立ち上がりますが、水害の場合は、時間とともにレベルと範囲が広がっていきますので、どの場所を提供すればいいかは人間の判断に委ねざるを得ません。ただ、データの提供を始める段階が「警戒レベル3なのか警戒レベル4なのか」という話は、なかなか我々もわからないところもありますので、「内閣府に非常災害対策本部ができたとき。もしくは国交省の中に非常災害対策本部ができたとき」という条件をつけています。この情報が、我々が把握できたタイミングで、現状の被害状況を鑑みて、提供するメッシュを決めると。いうことをやっています。交通情報センターさんとはちょっと判断レベルが違います。

 

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杉田(日本道路交通情報センター):道路交通情報センターはラジオ・テレビ・インターネットを使って渋滞情報を提供していますけれども、特に災害時は、「通れた」という情報の前に、「そこに行かないで」という情報を皆さん望んでいますし、危険なところを先に提供しなきゃいけないというルールなんですね。東日本大震災のときもそうでしたが、がれきを分けたところが「通れますよ」とデータが上がったときに、避難をする人と救援・救助をする人は逆方向に進むので、そこで大渋滞してしまって全く動かなかったということがあり、どういう情報をどういうタイミングで誰に対して、提供するのかっていうのも論点に含んだ方がいいのかなとは思いました。いろんな防災訓練などにも参加していますが、消防やDMAT(災害派遣医療チーム)さんからは、「自分たちしか通れない道路はどこか教えてくれ」という要望が結構あります。誰にでもリアルタイムにすぐ「通れますよ」という情報を提供してしまうというのは、混乱を招くような気がします。危険だと思っています。

情報の伝え方、提供の仕方も検討していただけたらと思いました。通行実績を提供するタイミング、理念は、規制の状況や被災の状況を見ながらその都度、判断をしているので、ルールで「こういう風な基準です」というのは決めづらいというのが現状です。

 

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関本(東京大学):ありがとうございます。「今後どうしていきたいか」ということも含めて議論していく形にしていきたいと思います。皆様、色々とご意見をいただきありがとうございました。今後の検討会については、皆様の意見だと、もうちょっと時間をかけて、あと2回くらいは議論してもいいんじゃないかと。全体の意見かなと思いました。第3回、第4回については論点の話が中心に検討会が行われると思いますので、是非ともよろしくお願いします。

 

捧(NHK):ありがとうございます。次回は9月開催予定になります。ぜひご参加いただければ幸いです。

 

15.消防現場の視点 「発災後72時間のデータ活用に大きな期待」

 

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【検討会後に寄せていただいたご意見】

小山(熊本市消防局):皆さんのご意見をお聞きして、車両データだけでは限界がある気がしました。また、行政との連携を模索すれば個人情報の観点からも色々と課題が多く感じます。

私は、このデータ利活用が実現できるのであれば、救助に向かう側にも最大のツールとなり情報重複回避への対応も可能になるものと思っております。

人命救助に関しまして、生存時間は発災直後から72時間と言われておりますので、論点1及び論点2が構築できれば素晴らしいことだと思います。

二瓶教授がおっしゃった車両冠水箇所及び流量や、排水ポンプ車の配置箇所等がわかればすごい事です。

民間事業者による航空機を活用したリアルタイム上空災害情報送信は現時点では課題も多いかと思います。

近年発生した熊本地震や九州北部豪雨、広島・岡山を中心とした豪雨災害時も報道ヘリ及び民間ヘリによる活動障害が生じましたので、令和2年豪雨災害時からは救助ヘリによる活動が落ち着くまでは災害対策本部長下命により、救助ヘリ以外の他機関ヘリが被災地上空を飛行することに制限をかけております。

災害時はライフライン被害も発生しますので、携帯電話及びインターネットもかなり使えなくなることが予想されます。

災害発生と同時に、災害分布による各災害範囲予想によるデータ解析。各地区(集落)の人流把握方法の追求も必要かと。

令和2年豪雨災害では通信手段(携帯使用不可)がなく、各集落の自治会長に配備の衛星電話が活躍しました。

 

16.誤った判断のリスクも 慎重な検討を

 

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【検討会後に寄せていただいたご意見】

溝上(熊本学園大学):

1)洪水発生時刻以降の時間帯のプローブのサンプル数が多くないことによる観測速度の信頼性をどう評価するか
2)氾濫状況とプローブ情報の時間幅が整合しているとはいえない.通過できなくなったかどうかは1分1秒を争う判断なので.インターバルは長くても10分でしょうか.
3)通れる(通っている)区間は判別できるが,知りたいのは通れない区間であって,果たしてプローブ情報が無い区間が通れないのかは分からない
4)これらより、時間帯別のプローブ情報といった単一の観測値だけで,通行可/不可の判別するのは危険である.
5)議論の最後にもあったように,日常の情報との比較による異常値検出,連結するリンクの時系列的なプローブ情報などの他の情報を融合した情報による現時刻の通行可/不可の判定モデルなどが,学術的にも興味があるし,有用かと思います.
6)数理的なモデル化が困難な場合は、「こういう場合は途絶する」といった判別が出来るような機械学習モデルが有効かもしれません.どのような教師データをどう集めるかは大きな問題ですが.しかし,これも通行不可を可と誤判別した場合はより危険です.
7)通行禁止判断など,何に使うかによって異なる精度の判別が必要になってくるでしょう.

 

 

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↑第1回検討会の議論はコチラから

 

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↑洪水予測システムに関する議論はコチラから

目 次

1.   車の通行データ浸水場所がわかる?

2.   車の平均速度がいつもと違う」 そこに異変はあるか

3.   「データ量」が課題 少ないサンプルは誤解のもとに

4.   発災時の車データ利活用 東日本大震災が大きな契機に

5.   発災時通行実績データ提供開始 トリガーはいつがベスト?

6.   発災時利活用の研究・分析 データ提供の促進がカギに

7.   悪用・乱用の懸念も 最適なデータ連携の道とは

8.   発災時のデータ集積基地構築へ 模索が続く

9.   令和2年7月豪雨×熊本県 地図上データ可視化の試み

10.  発災時リアルタイムデータ利活用促進へ プラットフォームは?

11.  「災害時」だけではダメ 「復旧時」「平時」の活用

12.  平時のデータなくして 分析は不可能

13.  水道・電気・ガス 生かせるデータは多様に

14.  「災害がこれから起こるかも」時から データ提供は可能?

15.  消防現場の視点 「発災後72時間のデータ活用に大きな期待」

16.  誤った判断のリスクも 慎重な検討を

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