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【第2回】発災時 データで命は守れるか ~車データ編~
平本(東京理科大学):土木工学科、平本達典から説明させていただきます。氾濫浸水の際と、車の挙動の関係について、私は研究しています。
平本(東京理科大学):午前6時から7時の交通量と、浸水深6時の状態になります。車両通行データをもとに示したものになりますが、緑色の矢印に従って車は通行していました。また、平均速度は走り始めが時速17.4km、中原小の手前で時速16.6km、天狗橋と紅取橋の間で時速24.5kmとなっております。平均速度が中原小の手前で時速16.6kmに減少したところに着目しました。
平本(東京理科大学):天狗橋は車が走れる橋ではないので、車が紅取橋を通ろうとして何らかの都合があって天狗橋の方に向かったのではないかと予想しました。
水野(TomTom):今回の分析、弊社のTraffic StatsのArea Analysisというサービスを使っていただきました。弊社が検知したプローブデータを基にして過去、交通状況がどうなっていたかを表現しているものです。二瓶先生のチームにお渡ししたのは1時間毎のデータですが、15分が最小単位です。「蓄積されているビッグデータを解析し車両が通過できる指標」ですとか、平均車両通過周期なども持っています。リアルタイムでも、どの程度の「通れなさか(車が平時に比べて通っていないか)」の指標を元に通れない道を配信しています。二瓶先生のチームが過去のデータを基にして、シミュレーションと組み合わせて、「本当に合っていた」ということで、私たちもびっくりしています。
畑山(京都大学):重要なデータを見せていただきありがとうございます。速度については平均速度と言われていましたが、台数がずいぶん影響すると思います。「たまたま1台だけがゆっくり動いていました」という話になってしまうと、予測にはならないんじゃないかと。それなりにまとまった量がですね、「平均速度が遅かった」いう話になると、予測にも使えるのかなと。そう考えると、どのリンク(道路区間)にどの位の台数がいて、平均だけじゃなくて「分散がどのくらいあったのか」という情報を兼ね合わせながら、「予測に使っていいリンク」と、「それではまずいリンク」に分けないといけないかと思いますが、そのあたりのデータはわかるんでしょうか。
水野(TomTom):中間値もありますし、パーセンタイル、分散、統計的な値も持っています。0から100まで。それを見ていただくともっと総括的にご覧になれるのではないかと思います。
畑山(京都大学):過去に地震で、HONDAさんのデータを使って、Uターンなどを見つけ出して「地震で動けない道・通れない道を見つけられないか」という研究がされていましたが、「個別の行動なのでなかなか大局を捉えにくかった」と聞きまして、データ数が少なかったというのもあるんですが、その話を思い出しました。
今回、後分析で、可能性を見出したというところまでは理解できますが、「リアルタイム分析でやれるのか」と考えたときに、例えば大雨になったら視界がなくなっちゃうので、「だから速度が低下します」というのはあると思います。だから、「氾濫しているから速度が低下する」とは言いづらいのではないでしょうか。速度が低下していたところを、二瓶先生のシミュレーションと合わせると「確かに氾濫していました」という話はわかると思いますが、それをひっくり返して、「速度が低下しているから氾濫している」とは言いにくいんじゃないかと。
あと行き先へのルートの話もあるかと思いまして、どこに行こうとしているかでだいたいルートが決まってくる中で、その途中が冠水していれば何らかの行動を起こすんですけれども、そもそも浸水地域内に目的地がない場合、その道はほぼ人は通らなくなってしまったり、あるいはハザードマップで深刻なことが書かれているだとか、「アンダーパスがあるから行くな」と書かれているところはそもそも運転手が意図的にその道を通らないという話も出てきます。「データが取れないからよくわからない」という話にもなる気がします。このあたり、こういう研究を続けていくと解消していく可能性はあるんでしょうか。
二瓶(東京理科大学):説明した中には、「ちょうどいいところ」を見せたところもあって、もちろん災害時と平常時で速度が災害時の方が大きい道もあるんですよね。道路一本一本で見ていくと、個人(ドライバー)の属性に大きく依存してしまうので、それはあまりうまくいかないだろうと思っています。面的に見ることに意義があって、「どうやって見ていくのか」という課題がありますが、1本の道路ではなく、周辺の道路も含めて、「通常と比べてどう違っているか」。まずは全く通っていない道路から分析を始めますが、そのうちいろんな交通のパターンを使って、浸水の水際を割り出すとか、「少しは冠水しているんだろう」というのを出していくことになる。ただ、昔に私が使っていたデータに比べてTomTom社のデータは10倍くらいのデータ量で、以前のデータでは見えなかったことが見えてくるので、いろんな方々のデータと突き合わせるということがこのプロジェクトの意義だろうと強く思います。
柴山(Agoop):リアルタイムに分析する重要性って結構あると思いますが、車のプローブデータですと、車からクラウドに入ってそこから分析するまでってかなりタイムラグが発生するのではないかと思いますが。東日本大震災のときも、1日後か2日後くらいにデータがタンキング(一括処理)されていたと認識していましたが、今の技術ですと何分後くらいにリアルタイムのデータが把握できるようになっているのでしょうか。
水野(TomTom):弊社のリアルタイムの製品は、遅れ時間は2~3分です。弊社の内部では30秒から1分です。リアルタイム性は高いかと。
柴山(Agoop):ダイレクトに車から、TomTomさんの仕組みでやっているということですか。
水野(TomTom):はい、そうです。私たちはプローブは常時、いま走っている日本全国の車両の10%から20%を所有しています。なので実際には5倍から10倍、走っている車両は存在する可能性があります。
柴山(Agoop):それだけあれば色々とわかりそうですね。我々も数百万台くらい、スマホでやっています。
柴山(Agoop):こちら、今年1月にトンガ津波がくるときの奄美大島の状況です。スマホの加速度センサーで、赤い点が時速10km、黄色とかが時速30km、40km。スマホですから船の沖出しも見えます。これだけのデータ量があれば、だいたい把握ができるかなと思います。
柴山(Agoop):奄美大島、左は通常時、夜中ほとんど車が走っていない。右側になると、ループ橋で避難して渋滞が発生している状況で、実際写真にも出て、テレビニュースにもなっています。我々もリアルタイムシステムだとだいたい5分後くらいに表示可能になります。
水野(TomTom):弊社もスマホからのデータが多いです。スマホからのプローブを入手していて、その中の車両だけをフィルターアウトして解析しています。
柴山(Agoop):加速度センサーである程度解析すると、車かどうか同定できるはずです。歩いているとか、電車とかで移動しているのを特定することが可能となります。
日本道路交通情報センター 杉田さん(左)、小野さん(右)
杉田(日本道路交通情報センター):私たち今、VICSセンターさんと、タクシープローブとかを使って平均速度を算出してVICSカーナビに出しています。色々と事前に研究をしたときに、リンク(道路区間)ごとで見ると15分あたり7台くらいの台数が通っていないと、平均速度がかなりずれてくる。真値に対して誤差が出てくるというのは分かっていたので、それくらいの精度は必要なのかなというのが私たちの感覚でした。それとTomTomさんにお伺いしたいのですが、プローブを使って10%から20%の車両の把握数だということですが、大型車の挙動などは乗用車と違うと思いますが、大型車の検知や割合はわかるんでしょうか。
水野(TomTom):大型車の検知もやっていて、製品としては出していないですが、来年・再来年には大型車だけのリアルタイムのデータを出す製品を出す予定にはなっています。大型車のプローブの挙動から、「これは大型車」と弊社が推測したり、プローブの発信元が「大型車です」と最初から送っていただくというのを両用いたします。
福森(Honda):先ほど、車側の限界値が何秒くらいという話があったかと思います。車からサーバーに送るのは、1分以内に、お金さえあれば上げられます。ただし、個人情報の処理とかがありますので、そこをどこまで統計確保するかですけど、それを加工してもおそらく1分以内に、1回弊社を経由して他の会社さんのサーバーに届けることは技術的にはできますし、実績としてもございます。
柴山(Agoop):10年経つと技術が進んでいるなと思いましたので、非常に有効的なデータになるのではないかと思います。これを現実にやると多くのコストがかかりますよね。
福森(Honda):そうですね。