海外放送事情

完全デジタル移行後の世界の放送動向

欧米先進国や東アジアでは、2012年に地上デジタル放送への移行が完了した。この節目をとらえ、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、韓国の7カ国について、各国におけるメディア利用とサービス状況やアナログ放送終了後の電波の有効活用をテーマに、各国の放送の現況を概観した。

各国ともにインターネットと携帯端末の爆発的な普及を背景に、既存の放送事業者による通信網を利用したテレビ番組配信サービスが各国で提供されているが、こうした状況の変化にもかかわらず、家庭の居間でテレビのリアルタイム視聴を楽しむ姿は依然としてテレビ視聴の中心である。

日本の公共放送NHKは新サービス計画の重点事項としてハイブリッドキャストに取り組んでいるが、ヨーロッパのドイツ・フランスのHbbTV、イギリスのYouView、そしてイタリアのTivu Onの3つのサービスがそれにあたる。これらに共通していることは、放送後の番組のキャッチアップサービスを通信網で提供することだが、HbbTVは視聴しているテレビチャンネル・番組に関連した双方向サービスを重視し、YouViewは過去といまを問わず、すべてのチャンネルで提供している番組の入り口を提供しているようである。

アナログ放送終了後の電波利用は、どの国でも需要が拡大する無線ブロードバンドへの利用が検討されている。しかし、ヨーロッパでは、地上放送の完全HD化を最優先している。一方、日本のように4K/8Kという高画質化へのロードマップを描いているのは、フランスと韓国に限られている。

メディア研究部 海外メディア研究グループ