海外放送事情

始まったドイツの新受信料制度

~全世帯徴収の「放送負担金」導入までの経緯と論点~

「パソコンや携帯端末など、放送サービスを利用できるさまざまな多機能な機器が普及している現在、1970年から続いてきた受信機の設置を徴収根拠にする受信料制度はもう時代遅れではないか」。ドイツの放送政策を決める各州政府はこのように考え、2006年10月、放送と通信の融合時代にふさわしい、公正で簡素な受信料のありかたについての検討会を設置した。およそ4年にわたる検討の後、受信機の設置の有無に関わらず、すべての世帯と事業所から徴収する「放送負担金」というモデルが採用された。公共放送の独立を保障し、制度として分かりやすく、実行が可能で、公平で、プライバシーに介入せず、制度としての継続性があるという点において優れていると評価されたためである。2013年1月に実施となった新制度は、メディアや経済界からの批判はあるものの、国民の間ではそれほど大きな反発もなく受け入れられていると見てよさそうである。その理由としては、大多数の世帯には変化は生じないこと、負担がより公平になること、プライバシーが尊重されること、公共放送の増収にはならないこと、などが考えられる。

メディア研究部 杉内有介