海外放送事情

シリーズ公共放送インタビュー

【第14回・フランス】セルジュ・ルグール氏(トゥルーズ大学教授)に聞く

~番組制作システムの構造的問題~

大改革のさなかにある公共放送フランステレビジョン、7月号ではフリムラン会長が、ニューメディアへの展開を含め前向きな将来像を語ったが、危惧を抱いているメディア研究者もいる。「公共放送の終焉に向かって?」の著者でトゥルーズ大学のセルジュ・ルグール教授は、フランス特有の番組制作システムに構造的な問題があるという。

フランスでは1974年肥大化したフランス放送協会が7つの事業体に分割され、制作部門は分離されて番組制作会社となり、その後民営化された。フランスは自国文化の保護意識が高く、放送局に対してドラマなどの番組制作の3分の2以上を国内の独立プロダクションに発注しなければならないと政令で定めている。この結果公共放送フランステレビジョンの自社制作番組はニュース番組などの10~15%程に留まっている。それしか著作権を持っていないということで、ルグール教授によればそれは、ニューメディアへの展開にも支障があることを意味する。なぜなら、番組を様々なプラットホームに提供するためには、著作権を持っているプロダクション側と交渉しなければならないからだ。放送媒体が多様化するなかで視聴者はチャンネルの論理を離れ、ますますコンテンツ重視となっていく。そのためにも現在の放送と制作が分離された姿を改め、公共放送のイニシアティブで番組を制作し、著作権保持者にならなければならないとルグール教授は主張する。

メディア研究部(海外メディア) 新田哲郎