海外放送事情

ネットへの対応を迫られる米ニュースメディア

~Pew Research Centerの現状分析から~

ワシントンにあるPew Research Centerは、2004年に設立された非営利の独立系調査研究機関で7つのプロジェクトから成っている。Pewでは、特定の主義・主張に偏ることなく、客観的事実に基づいた分析を行うことを目的にしており、みずからをシンクタンクならぬ“ファクトタンク(fact tank)”と称している。7つのうちのひとつ、「卓越したジャーナリズムのためのプロジェクト(Project for Excellence in Journalism­=PEJ)」が毎年発行している『米ニュースメディアの現状(The State of the News Media)』は、アメリカメディアの最新状況を知る上で最適な報告書のひとつと言える。

最新の2011年版では、昨年(2010年)のアメリカのジャーナリズムの動向を、“デジタル化の著しい進展により、ニュースメディアの将来を決定するのは、実際にニュースを取材し、記事やリポートを制作するメディア企業そのものではなく、コンテンツを集め、対象に合わせて発信するGoogleやFacebookなどのアグリゲーター、ソーシャルネットワークであり、高機能の情報端末を提供するAppleなどのメーカーである”と指摘している。また2010年は、ニュース情報源としてインターネットをあげた人が46%でテレビに次いで2位となり、初めて新聞(40%)を上回った。さらに、スマートフォンやタブレットPCの急速な普及で、全体の半数近く(47%)の人がモバイル携帯端末でローカルニュースを取得するようになるなど、インターネットの存在感がさらに増している。

本稿では、PEJの最新の報告書の概要とともに、発行直前に行ったPEJ所長のTom Rosenstiel氏のインタビューを紹介し、アメリカメディアの現状、インターネットの影響などを概観する。

メディア研究部(海外メディア) 柴田 厚