海外放送事情

放送人養成と放送経営教育(2)

グレッグ・ダイクのBBC改革とコッター経営学

この報告について

これは、放送文化研究所が、昨年度(2007年度)に共同研究として行った「大学・研究機関における放送経営関連教育の実態調査」の報告(全3回)の第2回分です。

第1回は、藤田真文・法政大学教授による「日米の大学学部課程における放送関連教育~米オハイオ大学スクリップス・ジャーナリズム・スクールでの実地調査を通じて~」を8月号に掲載しています。また、第3回は、このあと10月号に、日本大学・別府三奈子准教授による「アメリカにおけるジャーナリスト教育と財団」(仮)を掲載する予定です。

メディア研究部(海外メディア) 横山 滋

長い間、公共放送にとって経営学は、切実な必要性を感じさせるものではありませんでした。しかし、技術革新がスピードアップし、“グローバル化”や規制緩和などで変化と競争が激化したことによって、公共放送も経営学の成果を導入し、経営を刷新せざるを得なくなりました。イギリスのBBCが、グレッグ・ダイク前会長の下で「一つのBBC」(One BBC)~「なせばなる」(Making it Happen)という一連の改革を行ったことは、ヨーロッパでもアメリカでも広く知られています。

グレッグ・ダイクは、1989年、ロンドンの商業テレビ局の社長に就任する直前に、米ハーバード・ビジネス・スクールの上級経営学講座で経営学を学んでいます。ここで彼はジョン・コッターという教授に出合い、世界の多くの企業が、従来のように職員に命令し、それがきちんと実行されているかどうか管理するというスタイルではなく、明確なビジョンを示して職員の自発的な創意工夫を引き出すという経営スタイルで成功していることを知ります。イギリスに帰ったダイクは、商業テレビ局の経営などで大成功を収めた後、2000年にBBCの会長に就任し、旧態依然たる経営下で士気を失っていたBBCに“職員参加の企業文化”を創造するべく、改革に力を注いだのでした。

この報告では、ジョン・コッターの企業改革論・リーダーシップ論の基本的な考え方を紹介し、それがダイクの行ったBBCの改革にどのように反映されていたか、21世紀の放送経営はどのような問題に直面しているのかなどを探ります。

メディア研究部(海外メディア)横山 滋