海外放送事情

韓国映像ビジネス興隆の背景

~文化産業政策と放送の海外進出~

ここ数年間、韓国映像ビジネスの海外進出が目立っている。実際に韓国の映画およびテレビ番組の輸出額は90年代後半から右肩上がりの成長を続けており、「冬のソナタ」で知られる地上波の番組輸出は2005年に史上最高の黒字幅を記録、その牽引役となっている。本稿はこうした輸出増加の背景に迫るもので、1990年代以降の産業としての放送の競争力強化を図ってきた韓国政府の政策に焦点を当てている。なお、古くから放送の政治的役割が重視されてきた韓国でその産業としての役割に注目が移った理由としては、技術革新による放送市場の拡大、放送をめぐる自由貿易体制の確立、マス・メディアを含む文化産業 (日本でいうコンテンツ産業)の経済的価値に対する期待、などが挙げられる。

国内外で放送の海外進出を促したといわれる金大中政権以降の文化産業政策では、独立プロダクションを対象にした制作環境の改善と人材育成、地上波を含めた放送事業者全体への輸出支援が行われてきた。その一方、比較的産業基盤が安定している地上波を中心に国産番組と外注番組の編成を義務付け、規制を通じた産業基盤の底上げも同時に図られてきた。

韓国放送の海外進出をけん引する地上波3社の輸出担当者のインタビューからこうした政策と番組輸出の接点を探ったところ、独立プロダクションが制作した番組の編成を義務付ける外注クォータが、輸出の9割を占めるドラマの競争力強化に一部貢献している可能性が指摘された。但し、流通チャンネルを確保する政策が韓国ドラマの輸出増加に貢献できたとすれば、それはこのジャンルが国内に安定した市場を持っていること、そして日本を中心とするアジア市場での売り上げが、さらに魅力的なドラマを作るインセンティブになっていることが大きく影響している。

沈 成恩