ことばの研究

新用字用語辞典の概要まとまる(1)

~改定常用漢字表で変わる漢字表記~

改定常用漢字表が6月7日に文化審議会から答申され、年内にも内閣告示される見通しだ。昭和56年(1981年)以来29年ぶりの改定となる。改定常用漢字表では196字が追加され5字が削除されて2136字になる。現在、放送文化研究所では放送の表記の基準にしている『NHK新用字用語辞典』の改訂作業を進めていている。漢字が大幅に増えることにより、1400項目の表記が変更になる見込みである。その主な内容について8月号、9月号で報告する。

改定常用漢字表には、多くの難読漢字が含まれている。NHKでは『新用字用語辞典』の改訂にあたって、(1)全国の高校生1万1000人を対象とした漢字が読めるかどうかの調査(2)視聴者を対象とした放送の表記の調査(3)NHK職員を対象とした漢字表記のアンケートの3種類の調査を実施した。

その結果にもとづいて「難読の音は読みがな」「難読の訓はひらがな優先(①ひらがな②漢字)」「かな書きの慣用がある訓読みはひらがな」という原則を『新用字用語辞典』の新しい版から導入することにした。また、今回漢字が増えたことにより、同音の常用漢字表内の別の音でこれまで代用していた「代用字」が、本来の字で書けるようになった。禁固→禁錮、棄損→毀損などである。

一方、過酷、肝心といった定着した代用字もある。こうした代用字の扱いについても報告する。さらに、常用漢字表の表外字だが一部NHKで独自使用する漢字や熟語などについて伝える。

次号では、「切る、斬る」「臭う 匂う」「湧く 沸く」など漢字が増えることで生じる同訓異字の使い分けや「~潰れる」「~籠もる」「~頃」といった複合語の表記などについて報告する予定である。

(メディア研究部・放送用語 吉沢 信)