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初めてのネット選挙 テレビはどう報じたか

インターネットを使った選挙運動が解禁された初めての参議院選挙が行われた。SNSを利用して政党や候補者が自らの主張や街頭演説の予定を発信することや,有権者が政党のSNS上の発言を拡散したり候補者を応援したりすることなどが可能になり,ネット上には選挙期間中膨大なソーシャルデータが出現した。

こうした状況を受け,テレビの選挙報道や関連番組にも変化が見られた。開票日とその翌日の東京キー局の選挙関連の放送を概観すると,まず,候補者や政党がどのようにツイッターやフェイスブック,動画サイトなどを利用していたかについては,全ての局が取り上げていた。

また,各局とも出口調査ではインターネットの情報を投票に参考にしたかどうかを尋ねており,その結果が報じられた。ちなみに,参考にしたと答えた人は,日本テレビの出口調査では全体の11%,NHKでは16%となっており,今回の選挙ではネット情報を投票の参考にした有権者の割合は2割未満にとどまっていたことがうかがえた。

一方で,ソーシャルデータそのものの分析や取り上げ方は局によって差があった。

TBSテレビでは,公示日から投開票日前日までのYahoo! Japanの検索データから,政党名・全候補者名の検索数を比較。そのほか,今回の選挙の争点となるキーワード(「経済」・「アベノミクス」・「憲法」・「原発」…など)の検索数ランキングを出し,それをきっかけにスタジオトークを展開していた。

ツイッターのデータを分析していたのは,日本テレビ,テレビ朝日,NHKだった。

日本テレビでは,公示日の7月4日から19日までツイッター上でつぶやかれた選挙に関する単語の中から,その単語がどれくらい増えたのかを1日ごとに調べ,そのデータをランキング形式で発表していた。また,出口調査の中で20代・30代が挙げた,関心のある政治課題のキーワードのランキングを出した上で,それらがツイッターでどんな形でつぶやかれていたのかを具体例を挙げながら分析。さらにその政治課題についての意見を20代・30代の人に聞くというリポートを放送していた。

一方NHKは,投票前日の7月20日までの1か月間,ツイッターの利用者が日本語で書いた全ての投稿から,選挙・政党・政治課題に関する単語を含むもの,およそ2,800万件を抽出,分析し,多面的に報じていた。例えば,政党が投稿した数では共産党がトップで自民党は5位だったが,15万を超えるフォロワーがいる安倍総理の「拡散力」が目立っていたこと,また,投稿に含まれた単語のうち,「演説」・「スタッフ」・「ありがとう」・「応援」などの単語が上位を占め,「原発」・「TPP」といった政治課題に関する単語は比較的下位にあったことから,ツイッターは候補者にとって選挙運動の予定や活動ぶりを示すツールとしては活用されたが,政策を訴えるツールとしては課題があったことなどを報じていた。

初めてのネット選挙に対し,テレビ局はそれぞれ手探りでソーシャルデータに向き合った。今後,こうしたデータを選挙報道や番組にどの程度活用していくべきか,また活用するならば,どういった視点や切り口が考えられるのか,改めて検証しておく必要があるであろう。

松本和也