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私的録画補償金訴訟でデジタル放送専用は対象外が確定

最高裁は,11月8日付で私的録画補償金管理協会の上告を退ける決定を行ない,東芝側勝訴とした知財高裁判決が確定した。これは,東芝がデジタル放送専用録画機の出荷価格に私的録画補償金を上乗せせず,代行支払いしなかったことから,補償金の管理を委ねられている「私的録画補償金管理協会」が,補償金徴収などの協力義務を負う東芝に支払いを求めて提訴していたもの。

私的録画補償金制度とは,私的使用のための複製が認められる中で,高品質,大量の複製が可能なデジタル録画の影響に鑑み,権利者への補償金支払いを課す著作権法上の制度であり,支払い対象となる録画機等は施行令で指定する。訴訟では,アナログ放送を想定して検討された録画機に関する施行令の規定が,デジタル放送専用録画機にも及んでいるかなどが争点となった。

2審の知財高裁判決では,施行令で機器を指定する際の検討状況や制度趣旨等から,デジタル放送専用の録画機は,現行規定が特定する機器には当たらず補償金の対象ではないと判断していた。

デジタル放送では,複製回数の制限など一定の著作権保護が技術的に可能であることから,デジタル放送専用録画機の補償金のあり方を巡り,関係者間の合意が整わないまま訴訟に至っていた。完全デジタル放送時代の今,録画機は全てデジタル放送専用であることから,今後,私的利用と権利者利益の保護の調整について制度のあり方も含めた検討が求められる。

山田 潔