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仏の国際放送社長,新政権と対立し辞任

フランスの国際放送を統括する国有番組会社AEF(フランス海外放送会社)のド・プジラック社長は,傘下のテレビ国際放送France24とラジオ国際放送RFIの合併に伴う編集権の問題で社会党新政権と対立し,7月12日に辞任した。

国際放送のテレビとラジオの合併は,保守のサルコジ前政権の敷いた路線で,2012年2月中旬にはRFIなどの経営委員会が合併を承認し,手続きが進められている。AEFのド・プジラック社長は「合併することでフランスの価値観を,統一された編集方針で各媒体に発信できる」と述べ,両者の編集部門を統合し,およそ300人の合理化を行って,より競争力をつける方針を打ち出していた。

これに対してRFIの労働組合は,「合併によってラジオ国際放送の編集権が失われ,ラジオの死につながる」として反対を表明,合併反対の嘆願書には,5月の選挙で大統領に選ばれたオランド氏も署名していた。

オランド新政権で文化・コミュニケーション相に就任したフィリペティ氏は7月11日,議会下院の文化委員会で「編集部門の統合は良いことではなく,まったく考えられない」と発言し,ド・プジラック社長の進める統合路線に明確に反対した。これを受けて翌12日,ド・プジラック社長はAEFの経営委員会に辞表を提出し受理された。任期は来年4月までだった。ド・プジラック氏は,辞任にあたっての社員へのレターで「株主である国は新しいAEFの社長を望んでいる。私のミッションは終わったと判断する」と述べた。

新田哲郎