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東電社外取締役兼職で批判 NHK経営委員長が辞任

NHK経営委員長・數土文夫氏が2012年5月24日に記者会見して,経営委員長を辞任するとともに,経営委員も辞任すると表明した。

実質国営化される東京電力は5月14日に新経営陣を発表したが,6人の社外取締役のなかにNHK経営委員長である數土氏が含まれていた。このニュースが伝わると,東京電力再建の主要任務を担う人が,原発問題や国のエネルギー政策,再建問題等を報道するNHKの経営委員長を兼職すれば,NHKの報道内容の信頼性が揺らぎかねないとして,日本放送労働組合が兼職反対を表明するなど内外から批判の声があがった。

番組に関する経営委員会の権限は番組基準と番組編集の基本計画の議決だけであり,個別の放送番組にかかわらないことなどから數土氏は5月22日の記者会見でも,法的に問題はないと述べていた。

ところが電力価格をめぐってNHKと東京電力が交渉中であることが明るみに出たり,経営委員会内部で兼職を疑問視する意見が出たりして,數土氏は一転して24日に,経営委員長と経営委員の辞任を表明した。

東京電力の新経営陣を選考するにあたって,報道内容の信頼性を損なうような人選は避けるべきとの認識が関係者に不足していたことを露呈する結果となった。

JFEホールディングス出身の數土氏は2011年4月にNHK経営委員長に就任した。NHK経営委員長は,会長選任の混乱で辞任した前の小丸成洋氏に続いて任期途中の辞任となった。

奥田良胤