福地茂雄会長の任期満了に伴うNHKの新会長に東海旅客鉄道（JR 東海）の前副会長・松本正之氏が2011年1月25日に就任した。2代続けての外部からの起用で，任期は3年。松本氏はJR東海の社長を務めたあと，10年から同社の副会長を務めていた。

NHKの会長は，国会の同意を得て任命される外部有識者が構成する経営委員会が選任することになっており，福地会長の再任辞退表明をうけて選考が行われた。選考過程で，経営委員会は前の慶応義塾塾長の安西祐一郎氏に就任を要請した。安西氏も10年12月27日に受諾する意向を経営委員会に伝えたという。

ところが，安西氏が就任にあたって交際費や人事に条件をつけたとの風評が新聞などで報じられた。これに一部の委員が反発し，会長選任に必要な9人以上の賛成（経営委員は12名）が得られる見通しが立たなくなったため，小丸成洋経営委員長は安西氏に辞退を要請した。安西氏は，条件をつけたことはない，風評に基づいて辞退を要請するのでは経営委員会を信頼できない，として11年1月11日に就任を拒絶した。小丸経営委員長は記者会見で不手際を謝罪した。

経営委員会は改めて候補者を選考し，1月15日に開催した臨時委員会で松本氏を全員一致で決定した。松本氏は早い段階で候補の一人として報じられていたが，混乱のあと急きょ浮上した。

小丸経営委員長は，混乱の責任をとるかたちで1月25日に委員長を辞任し，経営委員の辞表を総務省に提出した。