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デジタル化によるテレビ視聴の変化

視聴ジャンル増とお茶の間回帰現象 ~民放連の調査~

日本民間放送連盟は,2010年2月8日,デジタル化によるテレビ視聴の変化に関する調査結果を発表した。

調査は,テレビに関する意識調査とテレビCM 認知に関する調査に分けて実施された。このうちテレビに関する意識調査は,09年7月に関東の1都3県の10歳から69歳の2,400人を対象にインターネットで行われた。また,CM認知に関する調査は,東京の15歳から59歳の630人(各回)を対象に,08 年12月から09年9月の間に4回,訪問面接によって行われた。

調査に見られる主な傾向は,以下の通りである。

第1は,デジタル化で視聴ジャンルが増加している。「デジタル放送になって,見る機会が増えたテレビの番組ジャンルがあればお知らせください」との質問に対して,音楽番組,ドラマ,旅行・グルメ・紀行番組を挙げた人が多く,50.8%の人がデジタル化により,視聴ジャンルが増えたと答えている。とくに 50歳~69歳の女性では65.1%に上っている。

第2は,お茶の間回帰現象が見られる。お茶の間で家族がそろってテレビを見る習慣がなくなって久しいが,「デジタル放送を見るようになってから,リビングでテレビを見る機会は変化しましたか」との質問に対し,リビングで家族や友人と一緒にテレビを見る機会が増えたと答えた人が12.6%で,そのうち 56.4%の人が,「テレビやCMについて話題にする機会が増えた」と回答している。

第3は,デジタル化に伴い,薄型テレビを中心にテレビの大型化が進んでいるが,テレビのサイズが大きいほど「家族と一緒にテレビを見て,CMに関心を持ち,話題にする」傾向が強くなっている。「テレビで見たことについて家族や友人とよく話題にする」と答えた人は,46インチ以上の大型テレビの視聴者では 77.4%,32~46インチでは68.9%となっている。テレビを大事な情報源だと思っている人は,46インチ以上の90.3%に対し,32インチ未満では76.0%にとどまっている。

CMに関しては,「アナログ放送を見ていた時と比較して,テレビCMについてどう感じますか」との質問に対し,46インチ以上では14.0%がCMを好きになったと答え,16.1%がCMに関心を持つようになったと答えている。しかし,32インチ未満では,CMが好きになったのは9.5%。関心を持つようになったのは8.4%で,大型テレビの視聴者に比して低い結果が出ている。さらに,「CMで印象に残っているものはありますか」「CMについて家族や友人などと話題にすることはありますか」との質問に対して,46インチ以上では59.1%が印象に残っている,64.5%が話題にする,と答えているのに対し,32インチ未満では,それぞれ49.3%,52.7%と低くなっている。

また,ハイビジョン素材によるCMのほうが,ハイビジョン素材でないCMより認知率が高くなる結果が出ており,大画面テレビでは,ハイビジョン素材でないCMは,負の効果が生じるおそれがあるとの結果が出ている。

「テレビは友人と話を合わせるために見るのでネット動画サイトで十分」と回答した人は,10歳から19歳の男性では17.7%に上っているが,同年代の女性では12.0%,全体平均では9.3%にとどまっている。

奥田良胤