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英シンクタンク,公共サービス放送見直し案を発表

イギリスの非営利シンクタンクのPolicy Exchangeは1月14日に,「チャンネルを変える:公共サービス放送の急進的な改革案(Changing the Channel,A case for radical reform of Public Service Broadcasting in the UK)」を発表した。これは,BBCの元戦略部長で,現在メディア関連のコンサルタント会社を経営するマーク・オリバー氏による。

イギリス政府は,昨年(2009年)6月に2012年のデジタル完全移行後の放送通信政策を発表し,ブロードバンドにおけるユニバーサル・アクセスの保障や高品質のデジタルコンテンツの確保など諸目標を掲げている。その中にBBCを含めた公共サービス放送(PSB)の見直しも含まれ,政府は地上テレビの規制緩和と公共サービスコンテンツへの公的資金の投入に踏み出している。

オリバー氏の文書は,こうした政府の方針にこたえるもので,PSB改革について合計で32の勧告を行っている。BBCについては,人々からの信頼は厚いと認める一方,監督・執行の機能の未分離,到達率(リーチ)重視の番組制作費の配分などを批判し,監督機関であるBBCトラストを廃止し,外部規制機関へ移行することを提言している。

5月の総選挙を前に,野党保守党は前BBC会長のグレッグ・ダイク氏にPSBの見直しを委託したが,受信許可料から税金への転換を主張する氏の提案を保守党は受け入れなかったと報道されている(The Guardian 2/22)。また,BBC自身もデジタル移行後の新戦略の検討を進めるなど,PSBをめぐる議論は今後さらに活発になるとみられる。

中村美子