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CATVのデジアナ変換 導入促進を情報通信審議会が第6次中間答申

総務大臣の諮問機関である情報通信審議会は2009年5月25日,地上デジタル放送(地デジ)への完全移行に向けた第6次の中間答申を行い,2011年7 月の完全デジタル化以降もケーブルテレビ加入世帯がアナログテレビで視聴を続けられるよう,ケーブルテレビ事業者が地デジをアナログに変換して流す「デジアナ変換」の導入促進を政府に求めた。

ケーブルテレビの加入世帯は約2,300万世帯(世帯普及率44%)に上り,このうち,地デジ視聴可能世帯は2,250万世帯に達している。しかし,視聴者のなかには,まだ使えるアナログテレビをアナログ放送の停波後も捨てずに使用したいという要望があることや,2台目以降のテレビの買い替えが進むまでに時間がかかることなどから,中間答申では,デジアナ変換を「緊急避難的措置として導入を促進することが適当」と提言した。

ただ,デジアナ変換をめぐっては,高画質・高音質の放送が視聴できないといった問題や,デジアナ変換のために帯域が取られてハイビジョン化や多チャンネルサービスに支障が出るといった問題,さらに,アナログテレビを続けて使用することが可能になることによって,デジタル受信機の普及に影響が出るといった問題がある。このため,答申では,デジアナ変換を「暫定的措置」と位置付け,2009年度中に運用期間を明らかにし,ケーブルテレビ事業者に対してデジアナ変換の暫定的な導入を要請することが適当であるとした。デジアナ変換の導入については最終的には各事業者の判断となるが,答申では,できるだけ多くのケーブルテレビ事業者がデジアナ変換を実施できるよう,導入を支援するための措置を政府は検討すべきとしている。

さらに今回の答申では,デジタル受信機の普及や共聴施設のデジタル化対応など受信側の問題が引き続き課題となっていることから,政府に対してきめ細かい対策を求めている。

このうち,共聴施設改修については,2009年3月時点のデジタル化対応率が,受信障害対策共聴で約11%,集合住宅共聴(4階建て以上の集合住宅)で 7割程度と必ずしも順調とは言えず,改修の必要性について利用者が十分な情報を持っていなかったり,改修方法や費用負担に関する合意形成までに時間を要したりすることが対応遅れの背景となっている。このため,答申では,受信障害対策共聴・集合住宅共聴のデジタル化に関する情報共有の方法や関係者の役割,取り組みについて,「共聴施設デジタル化緊急対策」として早急に取りまとめるべきとした。また,共聴施設のデジタル化に特化した関係者の推進体制を早期に整備すべきと提言している。

また,受信機の普及については,2009年3月の総務省調査で,世帯普及率が60.7%と普及目標の62%に達せず,都道府県によって普及率が大きく異なる結果が明らかになった。このため答申では,受信形態別,地域別に普及状況を確認し,普及率が低い地域については,ほかの地域よりも取り組みを強める必要があるとしている。さらに,エコポイントを活用したデジタルテレビの購入支援を着実に実施することによって,デジタル受信機の普及促進を図るとともに,5,000円以下の簡易なチューナーが普及しやすい環境を整備すべきと提言している。

村上聖一