メディアフォーカス

香港RTHKのトップ 1年間不在の末決まる

香港の公共放送RTHK(Radio Television Hong Kong,香港電台)のトップである廣播処長に,以前RTHKに勤めた経験があるメディア経営者の黄華麒(Franklin Wong Wah-kay)氏が選出され,8月8日に就任した。RTHKは組織的には香港特別行政区政府の一部だが,英領時代にBBC関係者がトップを務めた頃から「編集権の独立」を掲げた公共放送としての役割を果たしてきた。しかし中国返還後は「政府の政策のPR強化」を求める親中派と,「政府の監視機能の堅持」を求める民主派の間で板ばさみとなり,去年7月に当時の廣播処長が「女性問題」で辞任した後は,政府も人選に苦慮して空席が続いていた。

今回選出された黄華麒氏は65歳,香港大学を卒業後RTHKに番組制作担当で入局,アナウンサーやコメンテーターの業務も歴任した。その後政府の汚職取締部門である廉政公署の広報やシンガポールのMediaCorp系の企業の仕事などに携わり,2004年からは北京に本拠を置くドキュメンタリー制作会社を経営していた。黄氏はRTHKのトップとしての抱負について,「編集権の独立は守られるべきだ」とする一方,RTHKが将来政府と切り離された形の公共放送になるべきか否かについては明言を避け,自分が政府とRTHK職員の間の架け橋として,職員たちとの意思疎通に努めたいと述べた。RTHKの番組制作人員組合の麦麗貞(Janet Mak)主席は,新しい廣播処長について,話をした際の印象は悪くないとした上で,「問題は彼が言っていることより,実際に何をするかだ」と述べている。

山田賢一