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通信・放送関連法一本化へ総務省研究会が中間取りまとめ

放送と通信の融合時代に入って新たな法体系の検討を進めている総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」(座長・堀部政男一橋大名誉教授)が2007年6 月19日,新たな法体系の方向性を示した「中間取りまとめ」を公表した。

この研究会は,2006年6 月に政府・与党が「通信と放送に関する総合的な法体系について2010 年までに結論を得る」ことで合意したのに基づいて設置された。

現在は,通信と放送に関する法律が9 つあり,「放送法」や「電気通信事業法」など放送,通信というサービスで分類したもの,「電波法」や「有線電気通信法」など無線か有線かで区分したものなど「縦割り型」でそれぞれ規制がある。しかし,ITの発達によって,今や,インターネットで動画映像が配信され,携帯端末でテレビが見られるようにもなっている。

研究会では,こうした情報通信産業の構造変化を踏まえ,番組や音楽などの「コンテンツ」,課金システムなどの「プラットフォーム」,通信網や放送施設などの「伝送インフラ」に分類して再編成し,「情報通信法」(仮称)として一本化することを目指すべきであると提言している。

放送は「コンテンツ」に関する部分で規制されるが,「放送」と「公然性を有する通信で放送と類似のサービス」,つまり放送と同じようなコンテンツ配信サービスは「メディアサービス」として位置付けられる。それ以外の特定間の通信などには,通信の秘密の保護が適用される。

「メディアサービス」は,社会的機能や影響力によって,「特別メディアサービス」と「一般メディアサービス」に区分けされる。区分けにあたっては,映像,音声などコンテンツの違い,視聴者数やアクセスの容易性などが基準になる。

現行の地上波テレビは「特別メディアサービス」に位置付けられ,(1)現在の地上波テレビに関する規制を原則維持する,(2)マスメディアの集中排除原則を維持する,ことなどを提言している。

インターネットの「ホームページ」など公然性を有する通信コンテンツについては,これまではまったく規制がなかったが,新法では,関係者全員が順守すべき「共通ルール」をつくり,「爆弾の作り方」や「自殺の方法を教える」などの有害コンテンツに関しては,規制の導入を検討することにしている。

「プラットフォーム」は,インターネットの検索サイトなどを想定しており,大手による寡占化が進まないよう一定の規制が検討される。

「伝送インフラ」に関しては,電気通信事業法や有線テレビジョン放送法,放送法の受託放送事業に関する分野,有線放送分野などを一元化して規制するが,基本的には柔軟で自由な事業展開をすすめるため,規制内容は公正競争の促進,利用者保護を重点にすべきだとしている。

研究会では,「中間取りまとめ」に対する意見を一般から募集したあと,2007年9月以降,放送事業者や有識者などからヒアリングを行い,12月を目途に最終報告書をまとめることにしている。

奥田良胤