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個人情報保護法全面施行1年新聞協会が見直し求めて意見書

個人情報保護法は全面施行以来1 年が経過したが,NHK や民放キー局も加盟している日本新聞協会は2006年4 月7 日に開かれた内閣府の「国民生活審議会・個人情報保護部会」のヒアリングの席上,「個人情報保護に関する過剰反応や,行政の意図的な非開示が拡大している」として,制度の見直しを求める意見書を提出した。

個人情報保護法の全面施行に当たっては, 3 年後に見直すことが閣議決定されており,「個人情報保護部会」では見直しに向けて, 2006 年の初めから施行後の評価や問題点についての検討を行っている。「個人情報保護部会」は,2007年夏を目途に取りまとめを行う予定だが,新聞協会からのヒアリングはその一環として行われた。新聞協会は,ヒアリングに先立って実態調査を行い,それをふまえて意見書をまとめた。

個人情報保護法の目的は,個人情報の保護に配慮しつつ,いかにその有用性を確保していくかにあるが,意見書は「現状は『個人情報は隠すべきだ』との誤解が蔓延している」と指摘し,その具体例として,以下のような事例をあげている。

教育現場では緊急連絡網の名簿作成をやめたり,卒業アルバムに住所や電話番号を記載しない学校が増えている。

医療現場では事件・事故の被害者の容態を警察に教えなかったり,介護に当たる施設職員に被介護者の情報を教えなかったりしている。

自治体のなかには,守秘義務のある民生委員にまで,地域の一人暮らしの高齢者や障害者の情報を提供しなくなったところがある。

災害時に支援が必要な防災弱者を守るための自治会の名簿づくりも難しくなっている。

さらに,行政における意図的な情報非開示の動きが増えている。たとえば,従来は公表されていた幹部の天下り先が伏せられたり,不祥事を起こした職員の名前が公表されなかったり,幹部公務員の経歴が省略されたりしている。

こうした例は,必要な情報,出しても問題のない情報までが個人情報保護法に抵触するおそれがあるとの過剰反応で隠されていることを示している。

過剰反応による情報の隠蔽ぺいや行政の情報非開示は全国的な傾向で,法施行にともなう一時的な混乱ではないと新聞協会は指摘する。

新聞協会は,個人情報を適切に管理し,保護することは当然としながらも,「国民が知るべき情報や,地域社会で共有すべき情報まで隠すことは許されない」とし,「匿名化の流れは『知る権利』を脅かし,『表現の自由』や健全な民主主義社会の根幹を揺るがしかねない」として危機感と深い憂慮を表明した。個人情報の保護を理由に,「公共の利害に関する事項についてまで,情報の隠蔽が進んでいる実態は,法律が想定した保護範囲を大きく逸脱している」と新聞協会は指摘し,個人情報の有用性と保護のバランスに配慮した制度の見直しを行うよう求めた。

ヒアリングの席上,「個人情報保護部会」の委員からは「なぜその情報が必要なのかを読者や視聴者にきちんと説明する必要がある。これまで,新聞社や放送局は積極的にはしてこなかったのではないか」との意見が出された。

奥田良胤