メディアフォーカス

BSデジタルの普及数 1,000万を突破

NHKは,9月8日,BSデジタル放送の普及数が今年8月末で1,000万を超えたと発表した。内訳はデジタルテレビが528万台,デジタルチューナー(チューナー内蔵録画機を含む)が132万台,ケーブルテレビ用STB(セットトップボックス)が170万台,そしてケーブルテレビのデジアナ変換視聴世帯が183万で,合計すると約1,013万となる。500万を突破した2003年12月末以降,普及が加速しており,地上デジタル,BSデジタル,110度CSの3波対応チューナーを搭載した薄型テレビの登場が普及のペースを高めている。

放送開始から4年9か月で1,000万を突破し,BSデジタル放送がメディアとしての存在感を高めつつある一方で,広告収入の伸び悩みでBS民放局の経営は依然厳しい状況にある。

民放キー局系5社は設立以来,赤字経営が続いている。そのため各社は番組制作費の抑制,業務の効率化などで経費削減を進め,赤字額の圧縮に努めている。 2005年3月期の決算では,営業収益を対前年度16.5%増の181億9,000万円としたが,営業費用をまかないきれず,5社全体の最終赤字は138 億8,000万円となった。

データ放送では2004年に1社が撤退し,今年9月末に2社が放送を終了,11月末にはさらに1社が放送を終了する予定。ラジオでは今年9月末に10チャンネルが放送を終了した。

インターネットや携帯電話,CS放送など様々なメディアの間で,広告費の獲得競争が続き,BS民放局の経営は低迷してきた。しかし普及数が1,000万を超えたことで,各局は今後,BSデジタル放送の広告媒体としての価値が高まるものと期待しており,ドラマや海外紀行など新番組の充実にとりくんでいる。

こうした中,今年9月14日に総務省はBSデジタル放送に4社が参入を申請したと発表した。これはNHKのBSアナログハイビジョンが2007年に終了するのに伴い,その後の同周波数帯を活用するため免許申請を受け付けていたもので,申請したのは,日本ビーエス放送,スター・チャンネル,三井物産,World Independent Networks Japanである。日本ビーエス放送は40~70歳代向けの教養系番組が中心,映画専門のスター・チャンネルは有料で放送する。三井物産は子会社を新設してアニメーション,音楽など幅広いジャンルを総合編成する。World Independent Networks Japan は地域情報を発信する。4社ともにハイビジョン放送を計画し,普及数1,000万を超えたBSデジタル市場の成長性に期待をかけている。総務省は年内に2 社程度を認定する。認定された事業者は2007年内に放送を開始する予定であり,既存の事業者を巻き込んで激しい競争が繰り広げられそうだ。

BSデジタル放送推進協会(BPA)は去年秋に行った普及に関する調査で,2007年9月末に普及数2,000万に到達すると予測した。しかし,現在1日1万件のペースで普及しており,2,000万突破は予定より早まるのは確実だろうと話している。

今後,普及が進むにつれ,放送事業者は視聴者の厳しい選択に迫られる。各放送事業者がBSデジタルならではの魅力あるコンテンツをどれだけ視聴者に提供できるのか。普及数1,000万突破は,BSデジタル放送が新たな段階へ入ったことを示している。

安田茂則