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NHKが「視聴者への“約束”」 結果を外部委員が評価する初の試み

NHKは2005年6月21日,2005年度の「視聴者への“約束”」を発表した。それによると約束は,

  • ①受信料にふさわしい,豊かで良い番組の充実
  • ②受信料の公平負担の徹底
  • ③視聴者の声の事業運営への反映
  • ④不正を根絶し,透明性と説明責任を重視する運営
  • ⑤経費の節減
  • ⑥デジタル技術の成果の視聴者への還元

の6項目である。

NHKは視聴者への“約束”に基づく活動に関して,どのように行ったかだけでなく,視聴者にどの程度満足してもらったかなどを,できる限り客観的に評価してもらう方針である。このため,外部委員3人による「NHK“約束”評価委員会」を設置した。

外部委員は,JR東日本フロンティアサービス研究所長の江上節子氏,兵庫県立大学教授の辻正次氏,野村総合研究所理事長の村上輝康氏で,いずれも業務評価等の専門家である。

視聴者への“約束”は,不祥事で受信料の支払い拒否等が増えているNHKが視聴者の信頼回復のための取り組みの一つとして発表したもの。“約束”した内容に関して,活動結果を外部委員に判断してもらう取り組みはNHKとして初めての試みである。

視聴者への約束については,イギリスの公共放送BBCが,1996年の特許状(放送免許)更新にあたって,政府との協定書に基づき発表したのが最初である。

当時の約束の主な内容は,①質の高い番組と正確で偏りのないニュースを放送する,②政治的その他の偏見から自由を守る,③隠しカメラ,マイクは原則として使わない,などである。

視聴者への約束がどこまで実現されたかをチェックする役割は,BBCの場合,経営委員会が担った。NHKの場合は,そうした役割をどこが担うか明確にされていないため,NHKの経営陣とは独立した形で外部委員による評価委員会を新たに設置して,公共放送としてふさわしい分析手法を検討して評価をすることとしている。

6項目の“約束”は,NHKが2005年度収支予算と事業計画を発表したときに,そのポイントとしてあげた,①視聴者とともに歩む公共放送のサービスの充実,②視聴者との結びつきの強化,③再生に向けた体制・組織の改革,④受信契約と受信料収納の確保,を踏まえたものだが,客観的に評価するためには,測定可能なレベルまでの具体化が求められる。

NHKは例えば「受信料にふさわしい,豊かで良い番組の充実」に関して,視聴者も参加して日本社会が抱える問題について討論する番組『日本の,これから』をあげ,このような番組を視聴率や放送時間にこだわらず放送することが視聴者に満足してもらえたかどうかを,世論調査や有識者インタビューなどで測定し,評価の資料にしたいとしている。

評価結果の妥当性を確保するためには,“約束”のすべての項目にわたって,視聴者にわかりやすい評価基準をつくる必要がある。まだ抽象的な“約束”の内容をどこまで具体的に測定可能な形にできるかが今後の課題となりそうである。

奥田良胤