メディアフォーカス

英BBC労組,効率化計画に反対し,24時間スト決行

BBCの職員が加盟するNUJ(記者・ジャーナリスト)とBectu(番組制作者)とAmicus(放送技術者)の3つの組合は,2004年末以後BBCが発表した一連の効率化計画に反対し,5月23日に24時間ストライキを決行した。

BBCは,2006年末に満了する特許状更新のための議論が進む中で,受信許可料制度の確保を目指し,今年(2005年)3月に,管理間接部門の外注とポスト削減および番組制作部門の人員削減とで,2008年までの3か年で合計3,780人の効率化を行うこと,これによって年間3億3,500万ポンド(約 670億円)の資金を生み出し,番組制作部門に再配分するという効率化計画を発表した。また,商業活動部門の見直しを行い,番組支援業務を行う子会社の BBCブロードキャストとBBCリソーシズの2社について,売却・民営化の方針を示した。この効率化計画に反対し,3組合は4月22日に実力行使の是非を問う組合員投票を行った結果,5月23日の24時間スト,5月31日と6月1日の48時間ストを決定した。

1日目の23日のストで最も影響が多く出たのはニュース番組で,国内向けの24時間ニュースのBBC NEWS 24とテレビ国際放送のBBC Worldは録画に切り替えられ,Radio 4の『Today』やBBC TWOの『Newsnight』などの看板時事番組は通常通りの放送ができなかった。また,数百人の合理化の対象となったスコットランドなど地域拠点局もストに参加し,ローカルニュースにもストの影響が及んだ。組合によると15,000人がストに参加したが,BBCは,当日の就業予定者約17,000人のうち,スト参加は38%に当たる約6,500人だったと発表している。

BBC経営と組合代表は,労働争議調停機関のAcas(the Advisory, Conciliation and Arbitration Service)で20時間の交渉を行い,5月27日に組合はBBC経営からの提案を検討するため,5月31日からの48時間スト延期を組合員に伝えた。 BBC経営の提案は,48時間スト中止を条件に,①組合が任意退職による人員削減に同意するならば,2006年7月1日まで強制解雇を行わない,②効率化 3か年計画の最終年を迎える際,効率化案を再検討する,③2007年6月1日まで,BBCリソーシズの部分的ないし完全売却を行わない,④交渉が進んでいるBBCブロードキャストの売却にあたっては,年金など人事問題を最優先事項とする,というものである。

組合は,5月31日に代表者会議を開きBBCの新提案について話し合ったが,「BBC経営はBBC子会社の民営化について大幅譲歩を示したが,解雇をめぐる不安への取り組みには不十分である」とし,スト権を留保するとともに,強制解雇について部門ごとに見直しを行うための枠組みを話し合うようBBCに求めた。一方,BBCのマーク・トンプソン会長は6月2日,組合代表らに書簡で,「組合から提起された懸念を解決するために,BBCは重大な行動をとった。可能な限り強制解雇は縮小したいが,部門ごとに行った効率化計画の規模と範囲を考えると,強制解雇ゼロという包括的な約束を与えることはできない」と述べ,BBCからの提案について明確に説明するための場につくよう組合に申し入れた。6月6日の時点で,両者の膠着状態は続いている。

中村 美子