メディアフォーカス

NHK受信料,対前年度比初の減収予算・事業計画案の国会審議を中継放送

2005年度のNHK収支予算・事業計画案の国会審議が,衆議院と参議院で3月31日までにそれぞれ行われ,民主,共産,社民党などは経営改革への決意があいまい等の理由で反対したが,自民,公明の両党が賛成し,賛成多数で承認された。

しかし,承認にあたって衆参総務委員会はNHKが国民の信頼回復に全力をつくすことなどを求める異例の付帯決議をそれぞれ全会一致で採択した。

衆参両院の総務委員会審議については,一連の不祥事とその後の経営陣の対応に対する視聴者の反発で受信料の支払拒否・留保が増えているなかで,中継放送して視聴者の理解を求めるべきだとの声が多方面から寄せられ,NHKは中継放送を行った。

委員会審議は衆参とも各1日だったが,審議の模様は,午前中は生中継で放送され,午後の審議については番組編成上の理由から深夜に録画で放送された。委員会審議の模様は,例年は審議が終わってから編集され,ダイジェストで放送されていたが,今回は録画も含め,審議全体が初めて中継放送された。

承認された2005年度のNHK収支予算・事業計画は,事業収入が6,724億円,このうち受信料収入は支払拒否・留保件数が増えたため6,478億円で対前年度比マイナス72億円。対前年度比で初の減収予算となっている。一方事業支出は職員の給与削減など経費節減により総額6,687億円。前年度に比して26億円減らし,事業収入と事業支出の差額37億円は債務の償還にあてる収支均衡予算となっている。

しかし,委員会審議のなかで,3月末の受信料の支払拒否・留保の件数が予算編成時よりさらに約30万件増えて約70万件に達する見込みが明らかにされ,受信料収入の対前年度比マイナスは40億円拡大して112億円程度に達する見込みとなった。このため,NHKが2005年度に赤字を出さないためには,視聴者の信頼を取り戻し契約総数の減少をくいとめるとともに,さらなる経費節減努力が求められることになる。

また,委員会審議のなかで,橋本元一会長は新年度早々に役員の刷新を行うことを明らかにした。

承認された事業計画によると,NHKは視聴者の信頼を回復するための抜本的改革策として,新たに設置した事務局機能を活用して経営委員会を強化するとともに,①視聴者とともに歩む公共放送のサービスの充実,②視聴者との結びつきの強化,③再生に向けた体制・組織の改革,④受信契約と受信料収納の確保,をうちだしている。

具体的には,番組面では,視聴者の視点から日本が抱える問題を掘り下げる大型番組『日本の,これから』を放送するほか,介護のあり方などを探る長時間の福祉番組,デジタル技術やインターネットを活用した学校教育番組などを重点的に放送することにしている。

視聴者との結びつきに関しては,全国54の放送局で「NHKふれあいミーティング」を年1,000回以上実施することにしており,再生に向けては,コンプライアンス(法令遵守)活動を強化する,受信料の支払拒否・留保世帯へ全職員及び集金スタッフが訪問する,などを計画している。

奥田 良胤