国内放送事情

放送の「ソーシャルメディア性」を拡張する試み

~番組レビューSNSサイト“teleda”の実証実験から②~

SNS(ソーシャル・ネットワーキングサービス)とVODを組み合わせることで、ネット上に放送番組を媒介したコミュニケーション空間(公共の広場)の構築を試みるため、放送文化研究所と放送技術研究所では、試験的なウェブサイトである“teleda(テレダ:仮称)”を構築し、実証実験を行った。

teledaは、番組を起点として人と人、人と社会をつなぐ「公共の広場」の提供を目指して構築された。SNSを活用した横と縦の回路を構築することで、多重かつ多様な交流の場を生み出すことを目的としている。teledaを用いた実証実験において、利用者のコミュニケーションにどのような特徴が見られたのか、teleda上の実際の書き込みと終了時アンケートの自由記述から具体的に検証を行い、番組視聴を媒介した「公共の広場」teledaの可能性と課題をまとめる。

今回の実験では、音楽やバラエティ番組で多数の書き込みが誘発された一方で、ニュース・報道番組やドキュメンタリー番組では長文の書き込みや視聴者同士の対話が誘発され、VODとSNSが組み合わされた環境が番組を介したコミュニケーションを拡張し、視聴の広がりと深まりをもたらす可能性が見出された。しかし、コミュニケーションの活性層と非活性層の間に「壁」が生じていたこと、また、番組ジャンルを軸にコミュニティが「細分化・分極化(タコ壺化)」する傾向も見うけられた。これらの課題に対し、今回モデレーター機能を導入した結果、一部のユーザーからは一定の評価が得られたが、一方で多面的で高度な役割が求められる結果となった。今後こうしたモデレート業務を担うネットディレクターのような専門家を育成していくことが求められる。今回はさらに、番組批評の土台を築く試みとして“コラムニスト”のコミュニティを用意したが、当初考えていたほどユーザーの関心を集めるには至らなかった。最大の要因は、番組を批評的に見てそれを言語化し、他者と議論するという習慣がユーザ―に定着していないことにあったと思われる。そこで重要な鍵を握るのは、番組制作者との“縦”の回路の構築である。対象を明確化することで批評しやすくなり、制作者にとっても、批評に晒されることが番組改善のチャンスになりうる。制作現場の理解を広げながら、「公共の広場」の可能性を拡張すべく改善を重ねていく。

メディア研究部(メディア動向)小川 浩司/村上圭子
世論調査部(視聴者調査)渡辺洋子