国内放送事情

新たな段階に入ったBSデジタル放送

2000年に始まったBSデジタル放送は、今年の夏に普及が2,800万を超え、年内に3000万の大台に届くことが予想されている。また5期連続で赤字だった経営状況も着実に好転しており、06年度には2局が黒字に転じた。そこで本稿は、BS民放を中心に放送開始から現在までの軌跡を振り返ると共に、現在の経営状況と編成方針(経営陣へのヒアリング)、さらに視聴者が放送をどう見ているのか(ネット・アンケート)を検証し、BSデジタルの現状と可能性について考察した。

まず、BS民放の経営陣および編成担当者へのヒアリングでは、累損の解消を念頭に置きながらも、独自のノウハウで地上波とは異なる放送サービスのあり方を模索している現状が浮かび上がった。大きな流れとしては、地上波の番組に飽き足らない大人・団塊世代に満足してもらえる番組の提供を目指し、購入・オリジナル・系列地上波番組の組み合わせによるサービスを行っている。一方、こうしたサービスの視聴実態に関するネット調査では、情報感度の高い層において一定量BSデジタルが見られていることがわかった。地上波にはまだ及ばないものの、視聴頻度や毎週視聴する番組数が増えており、独自の存在感を持ち始めている。但し、今回の調査はサンプルの年齢や性に偏りがあり、正確な視聴実態を把握するところまでには至っていない。より広範なサンプルを対象にした詳細な調査を行うことにより、BSデジタルの真のメディア価値を評価する作業が今後は求められているといえよう。

主任研究員 鈴木祐司 / 沈 成恩