国内放送事情

「地域社会」と「メディア」の実験

~15年目を迎えたコミュニティFM~

災害が起きる度、マスコミでカバーしきれないきめ細かな情報の提供が評価されてきた、市町村対象の小さなラジオ局、コミュニティFM。今年、制度化されて15年を迎え、現在200局あまりが、災害時はもちろん、日頃から「地域の個性」を生かした番組作りに取り組んでいる。

ケーブルテレビの役割の変化に伴い、新たな地域メディアとして登場したこのコミュニティFMは、設備投資も少なく、番組制作も簡便なことから、当初は「全ての自治体にメディアを」との呼び声も高かった。しかし実態は、開局後殆どの局が、不安定な経営状態の中で「地域振興」という目的を果たすべく四苦八苦の模索を続けている。

去年11~12月、ラジオセンターと放送文化研究所では、コミュニティFMの全社調査を行い、その実態に迫った。多彩な開局者の素顔と個性的な番組内容からは、いま日本の地域社会が直面する様々な課題、一方でまた、潜在的な可能性も感じられた。

15年経った今なお、開局数は増え続けている。崩れかけた地域の絆を食い止める起爆剤に、また生活の場としての地域の手ごたえ感を確かめる場に、と考える地域は後を絶たない。地域社会とは何かが見え難くなっている今日だからこそ、身近で小さな地域ラジオ局の取り組みは、今後の日本社会再生の鍵を握るといっても過言ではない。

全社調査と20数社に渡るヒアリングを元に、各地域の取り組みを立体的に報告する。

村上圭子(ラジオセンター)/主任研究員 鈴木祐司