国内放送事情

「日本人とメディア」総合調査研究報告②

拡張する「選択性」とテレビ視聴

デジタルメディア・ユーザーの事例研究から

「日本人とメディア」総合調査研究プロジェクトでは、2006年1月に実施した、デジタルサービスの利用状況や今後の導入意向に関する世論調査に引き続き、同年1~2月に、デジタルサービスの導入者を対象とする事例研究を行った。その結果から、VOD(ビデオオンデマンド)、DVR(デジタルビデオレコーダー)、インターネットについて、利用者の意識や利用行動の特性などを、テレビ視聴との関係に着目しながら分析した

  1. VOD(ビデオオンデマンド)
    「いつでも」「好きなものを」見られるといった点を評価する反応が見られ、無料サービスには、比較的高年齢層にも利用者がいる。有料サービスには、ラインナップ、費用対効果等の面で抵抗感が強い。
  2. DVR(デジタルビデオレコーダー)
    積極的な利用者は若年層、高収入層に偏っており、タイムシフト視聴やCMスキップが容易なことから頻繁に利用されている。一方で、操作が面倒などの理由で、購入しても積極的に利用しない人が一定数存在する。
  3. インターネット
    「1次情報はテレビ、関連情報はインターネットで」などのような「連動」型の利用形態や、両者の「ながら」利用が行われている。また、情報を取得するだけでなく、ブログやチャットなど、「交流」のメディアとしての利用者も増えている。

事例研究から浮かび上がってきたのは、利用者側の「選択性」が拡大しつつある現状である。たとえば、放送局の意図に基づく番組編成のような、従来型の放送が抱えている時間の制約から解放され、見たい時に見たいものが見られる状況が生まれている。

その一方で、これまで放送が果たしてきた、社会や時代の空気を共有する機能や、異なる立場や視点と出会う機能を、どのように検証し評価するのか。デジタル化が進むメディア環境において、放送の果たし得る役割が問われている。

専任研究員 渡辺誓司/専任研究員 米倉 律