国内放送事情

2011年 テレビはどうなっているのか

4月にNHKホールにて開催したシンポジウム『2011年 テレビはどうなっているのか』には2000人の参加者が訪れ、世論調査や関係団体調査など9種類の調査に基づく研究発表と、放送業界・家電業界・行政・消費者団体の代表者による議論が行われた。今年は、地上デジタルをどう開始するかから、 2011年のアナログ停波をどう実現していくかへと、全体の関心が移りつつある中での開催だった。放送事業者は地デジのネットワークをどれくらい整備できるのか、放送サービスはどう充実させられるのか、そして家庭で使われている1億台のテレビのデジタル移行はどう進むのかなど、課題は明確になってきている。

研究発表では、視聴者の実態にスポットが当てられた。既に地デジ対応受信機を持つ家庭でも必ずしもデジタル放送が見られていない現実や、テレビの価格について購入予備層は厳しく見ていること、さらに高齢者や低所得者層など地デジとの距離を持つ視聴者層があることが発表された。

今回のシンポジウムでは、これまでのデジタル化の推進が視聴者に十分納得の行くものとは言えない側面があったという問題提起が注目を集めた。今後の対応として、こうした視聴者に如何に説明をしていくか、関係業界の一層の努力が必要であることが確認された。

ドッグイヤー・ラットイヤーと言われるIT・デジタルの時代では、アナログ停波が予定されている2011年までの6年間に、多くの変化があり得る。現状のデータで厳しい結果が出たからと言って、今後改善されないということはない。しかしあまねく普及を前提とする放送においては、一部の人々を対象とするインターネットの世界と異なり、視聴者への説明責任は特に求められる。

デジタル化の完成に向けて始まっている議論が、多様な視聴者の全てに納得の行く、合理的な対応策にたどり着き、スムーズな進捗につながることを期待したい。

研究・調査 主任研究員 鈴木 祐司