番組研究

制作者研究<テレビ・ドキュメンタリーを創った人々>

【第5回】鈴木昭典(朝日放送)

~同時代史を検証し記録する~

鈴木昭典(83)は、テレビ・ドキュメンタリー界におけるおそらく現役最高齢のディレクターである。大阪の朝日放送(ABC)を拠点に、テレビの草創期から半世紀にわたって数々の話題作を送り続けてきた。文化人類学、医学、環境問題など幅広い分野の作品を制作しているが、最も力を入れて取り組んできたのか、自らが生きた同時代史=昭和史の検証と記録である。インドネシア残留日本兵の戦後を長期にわたって追った『ジャピンド』シリーズ(芸術祭優秀賞など受賞)で頭角を表し、「日本この100年」や「ドキュメント昭和」などのシリーズで「スタジオ・ドキュメント」と呼ばれるテレビならではの演出手法を切り開いた。80年代からは、公文書や当事者の証言にもとづく占領史、戦後史の実証的な解明にも取り組んだ。1988年に朝日放送を退職してからも「株式会社ドキュメンタリー工房」を設立し、『日本国憲法を生んだ密室の9日間』(放送文化基金賞奨励賞)などの憲法シリーズ、『検証 民放誕生』などの放送史シリーズなどの制作を続けた。また、テレビ番組などの映像記録を文化遺産として保存・公開することの重要性についても繰り返し指摘し、日本の現状に警鐘を鳴らしている。「88歳までにあと5本作りたい」というのが現在の目標。

メディア研究部  東野 真