番組研究

デジタル時代の教育とメディア③

小学校・英語学習の現況とメディア利用

~2006年度NHK学校放送利用状況調査から~

2006年度にNHK放送文化研究所が行った「学校放送利用状況調査」と、教師個人を対象に実施した「小学校5年生担任教師調査」から、小学校の英語学習について報告する。

小学校英語は、2006年に中央教育審議会で高学年における必修化が提案された。また、全国の小学校のうち、英語学習・活動を行っている学校は9割に達している。今回の調査では、必修化の対象となる5年生における現状を把握することに努めた。

本稿では、小学校英語と教師が置かれている状況やメディアの利用実態をとらえ、放送に何が求められているのか、小学校英語の教材としての可能性について考察を試みる。

  1. 小学校英語・授業の概況

    小学校5年生の英語学習の担当者で最も多かったのは外国語指導助手(ALT)である。 ALTのみが担当する場合もある。学級担任が担当する場合は、ALTと共同で授業を行うことが多い。

    授業時間数は、年間平均15.7時間(45分を1単位時間とする)だったが、授業担当者 によって差がある。ALTのみの担当よりも学級担任が担当する方が時間数は多い。

    教材の利用は教師全体の76.9%を占め、活字系、テレビ・ビデオ系、パソコン・インターネット系、音声系などさまざまなメディアが使われている。

  2. 小学校英語と学校放送番組利用

    NHKでは、小学校の英語学習教材として、学校放送番組『えいごリアン』を放送している。『えいごリアン』は、2006年度に放送されている学校放送番組の中で、5年生担任教師の認知が最も高かった。また、英語学習を担当している学級担任のうち、およそ3人に1人が、テレビ番組、番組ホームページ、ビデオ・DVD教材のいずれかで『えいごリアン』の利用経験があった。『えいごリアン』は、生の英語の発音に触れることができ、身ぶりや表情などから視覚的にコミュニケーションの楽しさが伝わることへの評価が高い。

  3. 英語学習番組への期待

    テレビの英語学習番組への期待で最も多かったのは、「歌やことば遊び、ゲームを取り入れ、聴覚から表現に親しむ番組」である。その他にもさまざまな期待が示されており、テレビ番組に期待を持つ教師は9割に上る。ALTのみの担当よりも学級担任が担当している方が期待は高い。

    小学校が希望するスケジュールや頻度でALTに来てもらうことが可能な環境にある学校は限られており、ネイティブ・スピーカーの登場するテレビ学習番組が期待されているものと考えられる。

専任研究員 渡辺誓司