最近気になる放送用語

野菜が売っている? 野菜を売っている?

「野菜が売っているスーパー」という言い方は、おかしいのでしょうか。

「誰々が 何々を 売る」というのが基本的な形ですから、「野菜売っているスーパー」あるいは「野菜売られているスーパー」というのが本来の言い方です。最近「野菜売っているスーパー」という言い方を耳にすることが増えていますが、正しくないと感じる人も多く、放送で用いるのには不向きでしょう。このように「が」か「を」かを迷う例として、「そこで卓球の試合やっている」(本来は「試合やっている」)などの言い方もあります。

解説

「売る」「やる」は、「他動詞」と呼ばれるものです。文になるときには次のような形を取ります。

[人・集団][物・商品]を売る

[人・集団][あること]をやる

ここから考えると、「野菜売っている」という文は、「野菜さんが何かを売っている」という絵本の中の世界のような解釈になってしまいます。

ただし最近では、「野菜売っている」でもかまわないという人が増えているのも事実です。特に、「発見・驚き」などの気持ちを伴って「あ、こんなところに野菜がある!」と言うのと同じような意味で「野菜が売っている!」というように言われることは、現代の日常会話ではしばしばあるようです。こういう状況の場合には、「野菜を売っている!」であるとか「野菜が売られている!」という言い方だと、「発見・驚き」のニュアンスがあまり出せないのかもしれません。

ウェブ上でおこなった調査では、本来の言い方である「野菜を売っている」が正しいと感じる人が圧倒的に多く表れました。これは、「新鮮な野菜 (が/を) 売っているスーパーを探している。」という言い方について尋ねたものです。ただし、「『が』が正しい」という答えや、「『を』が正しいと思うが、自分は『が』と言う」という回答が、若い年代になるほど多くなっていることが見て取れます。

「が」か「を」かを迷ったときには、「売っている」「やっている」の「ている」の部分を、過去形に変えて考えてみましょう。「野菜を売った」「試合をやった」というのはまったく問題ありませんが、「野菜が売った」「試合がやった」というのは、とても変ですよね。チェックする方法の一つとして、覚えておいてください。

「新鮮な野菜(が/を)売っているスーパーを探している。」(ウェブ上実施アンケート、2053人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)